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「老後破産」200万人の衝撃第1部 「普通のサラリーマン」だった私は、定年からたった10年で破産した
65歳以上の16人に1人が直面する
週刊現代 プロフィール

悠々自適な老後を送れるはずだったのに、気がつけば、想像だにしない厳しい現実と向き合わざるを得ない。香川さんのように、破産状態に陥る高齢者がいま急増している。

9月28日に放映されたNHKスペシャル『老人漂流社会〝老後破産〟の現実』では、「生活保護水準以下の収入しかないにもかかわらず、保護を受けていない」破産状態にある高齢者の現状を「老後破産」と呼び、特集を組んだ。番組を制作した板垣淑子プロデューサーが語る。

「少子高齢化が進み、年金の給付水準を引き下げざるを得ない一方、医療や介護の負担は重くなっています。自分の年金だけを頼りに暮らしている独り暮らしの高齢者の中には、崖っぷちでとどまっていた人たちが、崖から転げ落ちてしまう、いわば『老後破産』ともいえる深刻な状況が拡がっています」

いったい破産世帯はどれくらい存在するのか。河合克義明治学院大教授が語る。

「私たちが実施した東京都港区と山形県における調査では、生活保護基準よりも低年収である高齢世帯の割合がどちらも56%と、高齢世帯のほぼ半数にのぼることがわかっています。現在、一人暮らしの高齢世帯はおよそ600万人。推定で300万人が低年収世帯と言ってよいでしょう」

そこから、生活保護を受給している高齢世帯を差し引いた、200万以上もの人々が老後破産の状態にあると推定される。日本全国で65歳以上の高齢者の数は3200万人。およそ16人に1人が老後破産の状態にあり、独居高齢者に限れば3人に1人にも上る。

 

友達もいなくなり

前出の番組で紹介された破産の当事者の姿は衝撃的だった。

番組の冒頭、カメラは東京都港区のアパートに住む田中樹さん(仮名/83歳)のもとを区の相談員とともに訪れる。全国的に見て高齢世帯のうち単身世帯の割合が高い港区では、孤立対策として聞き取り調査を行っている。

カメラに映し出されたのは、ゴミ屋敷になる一歩寸前までモノが散乱し、足の踏み場もない一室。そこで田中さんは、小さく縮こまっている。痩せていて、顔に覇気がない。心配した相談員が尋ねる。

—暮らしぶりはいかがですか?

「ぜいたくはできないねえ」

—もしかして電気止められていませんか?

「そのままにしています。夕飯の仕度をするときはガスの炎を頼りにすれば、なんとか調理できるよ」