森喜朗元首相とプーチン露大統領の会談と日露電話首脳会談

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」 インテリジェンスレポートより
柔道世界選手権を観戦するプーチン大統領(上段・中央)と山下康弘氏(下段・左)---〔PHOTO〕gettyimages

【事実関係】
1. 9月10日、モスクワで森喜朗元首相がロシアのプーチン大統領と会談した。

2. 9月21日、プーチン大統領のイニシアティブで、安倍晋三首相との電話会談が行われた。

【コメント】
2.―(1)
今回、日本外務省だけに頼っていたならば、森ープーチン会談は成立しなかった。

9月2日、ロシアのチェリャービンスクで柔道世界選手権が行われた。このとき観客席で、全日本柔道連盟の山下泰裕副会長がプーチン氏に、「森喜朗元首相が来週、モスクワを訪れます」と話しかけた。するとプーチン氏は、「ヨシが来るのか。俺は聞いていない。安倍晋三首相はロシアに対してずいぶん厳しいことを言うが、森さんが来るなら、日本が何を考えているのか直接聞いてみたい」と答えた。

2.―(2)
森氏の訪露については、モスクワの日本大使館がロシア外務省に外交ルートを通じて要請した。しかし、その要請はプーチン氏に到達していなかった。

外務省が本気で森氏をプーチン氏と会わせたいと考えたならば、日本大使館がクレムリン(露大統領府)に直接働きかけなくてはならない。現在の日本大使館のロビー能力には限界がある。原田親仁駐露大使が外交担当のウシャコフ大統領補佐官(外政担当)に働きかけたくらいでは、森氏の会談要請がプーチン氏の耳に入ることはない。原田大使は最低限、プーチン氏の盟友であるセルゲイ・イワノフ大統領府長官に面会して、会談取りつけに努力すべきであった。

現地の大使が大統領府長官といつでも会えるような関係を構築できていないような状態では、北方領土交渉の進捗は期待できない。

2.―(4)
クレムリンには、日本との関係を発展させたいと考えるグループと、米国の同盟国である日本が対露独自外交を行う可能性はないので、日本との関係は冷却させたほうがよいと考えるグループが、暗闘を展開している。こういうときに、駐日大使の意見具申がクレムリンに影響を与える。クレムリンのゲームのルールを熟知する森氏だからこそ、このような働きかけができたのである。

2.―(5)
今回の会談において、プーチン氏は森氏に、訪日の意向を有していることを再度表明した。プーチン氏が首脳レベルでの政治対話を継続する意志を有しているということを確認できたのは、大きな成果である。

4.―(2)
電話会談で安倍首相は、プーチン氏に11月に北京で行われるAPECでの首脳会談を要請し、プーチン氏は基本的に応じると回答した。これにより、日露の首脳レベルでの政治対話が継続され、当初今年11月頃に予定されていたプーチン大統領の公式訪日は、準備が間に合わないために延期されることになるものの、来年の早い時期に訪日が実現される可能性が出てきた。・・・・・・(以下略)

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol045(2014年9月24日配信)より