山田肇×吉川尚宏×町田徹 【最終回】 「『首都圏電波』『外資』など4社目の携帯キャリア新規参入の方法はこんなにある」
~日本の電波の有効活用を考える座談会~
[左から] 山田肇さん(東洋大学教授)、司会の町田徹さん(経済ジャーナリスト)、吉川尚弘さん(ATカーニーパートナー)

【第5回】はこちらをご覧ください。

第4の事業者が参入しやすい条件を

町田: やっぱり、オークションを入れたくないための詭弁が常に出てくるリスクは見ておかなければいけないという話になるわけですね(笑)。

いま話が出た周波数の割り当ての指針について、吉川さんのほうからご説明いただけますか?

吉川: 5GHzではなく第4世代の割り当てで、3.4~3.6GHz帯を使う20MHz分ですかね、この割り当てをしましょうという案が出ているんです。これが残念ながら3社に対する割り当てなんですね。これだけ「4社体制でもっと競争政策が必要だ」、「競争政策と電波政策をリンクすることが必要だ」、と散々総務省の報告書に出ているにもかかわらず、やっぱり3社が対象なんです。

なぜ4社にできないのかということに、当局は答えを出さなければいけないと思うんですね。投資がかかるのはわかります。でも、投資がかからないような割り当て方式って一回議論する必要があるんじゃないか、と。

さっきおっしゃったように、本当に細かいバンドを与えて、全国のセンサーネットワークに割り当てるとか、あるいは東京オリンピックまでの間に都市開発が進む中で、ビル内だけで閉じた免許を無線0種みたいな形で付与して、不動産会社が携帯電話事業者になってそれをドコモやKDDI、ソフトバンクに卸役務の形で提供する形をつくるとか、工夫ができる。それがいきなり3社ありきになっていて。

山田: 700MHzの配分のときに、700MHzを二つに分けるんだよね、とみんなが思っていたら、なぜか突然三つに分けるような凄く中途半端な分け方をした。結果的に700MHzのLTEはLTEとしての最高性能は出せないようにして、強引に3社にして、イー・モバイルに与えたらイー・モバイルがソフトバンクに吸収合併されたという悲劇が起きているわけです。だから、「今はもう3社しかないんだから3社に公平に分ければいい、ハイ、オシマイ」と言っていて、そのあと状況の変化があったらどうするのか、ということですよね。

もっと公明正大に、何か理屈を作って、常にこの方式でやっていきますというのが正しい。アメリカ等ではそういう意味でオークションのような形で凄く公明正大にやっているわけですよ。これまでの割り当ての失敗記録のようなものはどんどん山積みになってきているのに、それに対する反省がない。

町田: 今回について言えば3社にタダであげますと言っている。タダでもらえたらやるかもしれない4社目のことは考えてないわけです。設備投資が莫大だと言うけれども、少なくとも何MHz分がタダでもらえたら、そのための設備投資をやるかもしれない4社目を無視しているわけですよね。

吉川: こういうキャリアアグリゲーションとか企業グループの議論があったのが3月以降ですが、1月に一回参入調査をやっているのです。そのときはイー・アクセスもありました。今、電波ビジョンの中間報告書が出た段階で、もう一回参入調査をやったほうがいいと思うんです。

というのは、大分最初の頃と状況が変わってきている。3社以外にももっと参入しやすい条件を作るべきだと思っています。いまも人口カバー率で全国くまなくカバーしてくださいって言っているんですが、第4の事業者が手を挙げるわけがないんです。だから、もう一回「どういうスキームだったら皆さん参入するつもりはありますか?」という参入意向調査を本来だったらやるべきなんです。

町田: 4社目が出ない高いハードルをわざと課して、それで3社しかいないという形を作っているわけです。それが凄く変です。私がそこで指摘したいのは、3Gの初期だったと思うんですが、オークションで電波をもらうのもお金がかかるよというアメリカでは、全国レベルで高いお金を払わないと買えない部分と、地域の中でも比較的市場価値のあるところで、小さく区切って中小企業でも買えるような単位のものを作って参入させるような努力をしていた。彼らは4社目、5社目、6社目を入れるという努力を当時していたんです。それに対して、日本は未だに4社目を排除するということをやっているわけですね。

吉川: 4社目が入りやすいような条件を作ろうという考え方は、少なくとも今回の開設指針の案からは見てとれない、むしろハードルを上げているように見えます。

山田: だから、「首都圏電波」とかを作ればいいだけの話なんです。首都圏だけだったら絶対ボロ儲けができるんだから、その代わりお金をたくさんよこしなさいよ、とか、あるいは帯域がちょっと少ないけど我慢しなさいよ、とか、さまざまなやり方があると思う。実際に今の格安スマホの場合には速度が遅いけど我慢して使う消費者がたくさんいるわけですから、そういうやり方もあるわけですね。

町田: あるいはもう音声は放棄してデータだけでやらせてみる安い枠があってもいいわけですよね。何かそこら辺がズレちゃっている。

山田: そうやって帯域を分けるということになると、その瞬間にさっきの地域WiMAXの話みたいにCATVのサービスエリアごとに全部分けてチマチマ与えるというようなことに突然なっちゃう。その中間でいくらでもやりようがあるはずなのに、もったいないですよね。

町田: キャリアの側からすると今は3社のキャリアは3社の中での有利不利はあっても、今のやり方をトータルで見れば新規参入がなくて幸せなんですよね。だから、これ以外のやり方をしろという声はキャリアからはあまり出てこない。

メーカーのほうも、日本国内でキャリアのようなサービスをする気があまりないし、投資力もない。やるんだったらどこかの途上国に行ったほうがいいと思っているからこれも入ってこない。アメリカ勢もかつてのように日本のマーケットの成長力に興味を持っていない。そうすると、一体どこから声を挙げさせれば実現するんですかね?

吉川: たとえば郵便局はどうですか。郵便局は海外では結構、フランス・イタリアを中心にMVNOをやっているんです。MNOのほうは参入障壁があるというならMVNOのほうをやるというのもあると思うんですけどね。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら