消費増税で総理の「ちゃぶ台返し」はあるか?「地方創生国会」の経済再生論議に期待する

29日に臨時国会が召集される。内閣改造後、初めての国会であるが、会期は11月30日までの63日間だ。

政府の方針は、総理の所信表明演説でわかる。所信表明は、各省から「短冊」という短い文を出してもらい、官邸でそれらをまとめて作るが、自民党とも相談することもなく、総理が自ら言いたいことを比較的自由に書ける。安倍総理は、所信表明で「地方創生」を掲げ、地方創生法案を臨時国会に提出するという。菅官房長官は、地方創生とともに経済の再生も最優先課題であるとしている。

ただ、会期が11月30日というのは重要なポイントだ。というのは、消費増税を国会の争点にしたくないことが透けて見える。安倍総理は、7-9月期のGDPを見てから12月に判断すると言ってきた。ということは、国会開催中は、野党からどのような質問があっても、「適切に12月に判断したい」という最強の応答要領が作れる。

もっとも、安倍総理は判断の時期を前倒してもいいとも言っているので、消費増税について国会論戦をまったく避けているわけではない。菅官房長官が一貫して12月に判断すると言うのは、国会運営上で安全運転ということなので仕方ないが、安倍総理のほうは消費増税で国会論議をしてみたいという気があるのだろう。このあたりは、総理と官房長官が役割分担して野党を揺さぶっているように見えて、興味深いところだ。

自民党の谷垣幹事長が、消費増税では野党時代に3党合意の当事者であったので、もちろん消費増税に前向きであるが、安倍総理としては、適当に「泳がせている」ようだ。というのは、安倍総理は消費増税にニュートラルで、最後は自分で決めるというスタンスなので、その前に誰がどう言おうと、その方が最終決断者として自分の価値が上がると踏んでいる。

もし谷垣幹事長が若い政治家で、場合によっては安倍総理の地位を脅かす存在であれば、そんな悠長なことを言っていられないが、谷垣幹事長はどう見ても旬が過ぎた政治家だ。ここでも、安倍総理の対抗馬になりうる石破氏が「石破の乱」に失敗し、閣内「座敷牢」に幽閉されたのは大きい。

今の段階では安倍総理が圧倒的な立場であり、余裕さえ感じさせる。その中で、国会で消費増税について、どのような論議が行われるのか、その結果、消費増税にどのような判断がなされるのか。筆者は安倍総理によるちゃぶ台返しを期待しており、その可能性はあると思うが、国民はおおいに関心を持っている。

民主政権時の3党合意という「時限爆弾」

その意味で、今国会での野党の責任は大きい。安倍総理の国会答弁は「適切に12月に判断したい」という無難なものであろうが、実際に消費増税をあきらめざるを得ないような〝鋭い〟国会質問を期待したい。なにしろ経済指標は悪いのばかりだから、野党としては攻めやすいだろう。

守る政府は、経済状況では分が悪い。増税による影響が軽微というのはウソだった。そこで、異常気象などという稚拙な言い訳をしている。しかし、総務省の家計調査のデータを見れば、消費増税以降の4~7月の4カ月平均の消費動向は過去30年間で最低である。これでは「異常気象」という説明では無理だろう。

ただし、攻める方も雑な議論がある。28日のNHKで民主党の枝野幹事長が言っていた「今の景気低迷はアベノミクスの失敗」というのはおかしい。消費増税を決めたのは民主党政権時の3党合意に基づいている。アベノミクスは、その「時限爆弾」を踏んだというべきだ。

しかも、以下のような経済成長率の動きから、消費増税前に経済は失速していたと指摘していた。

これは笑ってしまった。もう少し勉強したほうがいい。この図は前期比の伸びだ。対前年同期比で見た「巡航速度」の2%に近づけば、前期比の伸び率が低下するのは当たり前だ。対前年同期比の下図をみれば、いかに消費増税の影響が強く、経済低迷を招いたかが明らかだろう。

枝野幹事長は、金融緩和の効果を一切認めず、かつては「金利を上げれば経済成長する」というトンデモ論を公言した人だ。雇用と言いつつ、その達成手段が金融政策という世界の常識をわかっていない。枝野幹事長を含めて、日本の左派政治家は、欧州での左派政党をもっと勉強すべきだ。

アベノミクスの中心となっている金融政策は本来雇用政策であるので、欧州では社民党や共産党などの左派政党が言い出すものだ。米国でも労働経済学の大家であるイエレン氏が連邦準備制度理事会(FRB)議長として、雇用重視を実践している。

なお、消費増税による経済失速について、円安が原因とする「すり替えロジック」も横行しはじめた。これ以上の円安はまずいということで、円安が交易条件を悪化させるという話だ。

これは、交易条件という言葉を知らないマスコミや素人向けには効果がある。さらに問題なのは、専門家と言われる経済学者でも、交易条件の悪化を問題視する人が出ている。たとえば、岩田一政元日銀副総裁はインタビューで、円安は交易条件を悪化させると言っている(→こちら)。

交易条件とは輸出価格と輸入価格の比である。データを見れば、交易条件と為替レートにはほとんど関係がないことがわかる(下図)。

ついでながら、交易条件はほとんど原油価格で決まる(下図)。

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