牧野 洋の「メディア批評」
2014年09月26日(金) 牧野 洋

4ヵ月と32年---朝日の吉田調書報道と慰安婦報道、訂正までに要した時間の違いは何が原因か?

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吉田調書報道の謝罪会見を伝える9月12日付の朝日

吉田調書報道と従軍慰安婦報道の大きな違い

朝日新聞の「吉田調書」報道はスクープか誤報か---。

9月15日、私はこんなテーマで日本報道検証機構主催の「報道品質セミナー」にゲスト講師として招かれ、福岡から東京へ飛んだ。セミナーは絶妙のタイミングで大盛況だった。4日前の同月11日に朝日新聞社が吉田調書報道について記者会見し、誤りを認めたばかりだったのだ。

一方で、「スクープか誤報か」というテーマは意味をなさなかった。朝日がすでに誤報を認めていたのだから。報道検証機構の楊井人文代表にとって、朝日がこれほど素早く誤りを認めるのは想定外だったようだ。ジャーナリストの門田隆将氏が5月末にブログ上で「誤報」「事実のねじ曲げ」と書いてから、数ヵ月しか経過していなかったのである。

東京電力・福島第一原発所長で事故対応の責任者だった故吉田昌郎(まさお)氏の証言を土台にした吉田調書。朝日はこれを独自に入手して5月20日付朝刊で「原発 命令違反し9割撤退」と報じ、以後も大々的なキャンペーンを続けた。だが、9月11日の会見で「命令違反し9割撤退」という事実はないと認め、謝罪する事態に追い込まれている。

報道品質セミナーでは、吉田調書報道とともに従軍慰安婦報道も話題になった。いずれの報道でも朝日が誤りを認めているものの、大きな違いが一つある。初報から訂正までにかかった期間は吉田調書報道では4ヵ月足らずであるのに対し、慰安婦報道では32年にもなるのだ。

朝日が自らの慰安婦報道を振り返り、一部について誤りを認めたのは8月5日だ。同日付朝刊で朝日は検証特集を組み、韓国・済州島で慰安婦を強制連行したとする故吉田清治氏の重要証言について「虚偽だと判断し、記事を取り消します」と結論している。同紙が初めて吉田証言について報じたのは1982年9月のことだ。

4ヵ月と32年---。なぜこんな違いが出てくるのか。8月8日公開の当コラムでも書いたように、メディアの相互チェック機能がカギを握っているのではないか。

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