テレビのヨミカタ
2014年09月24日(水) 高堀 冬彦

市井の人々のささやかな哀歓を繊細なタッチで描く『深夜食堂』が3年ぶりに帰ってくる

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MBS公式HPより

ありふれた話を丁寧に切り取るドラマ

10月は番組の衣替えの季節。ドラマは『相棒 season13』(テレビ朝日)や『きょうは会社休みます。』(日本テレビ)、『ディアシスター』(フジテレビ)、『Nのために』(TBS)などがプライムタイムで新たに始まるが、深夜ドラマながら根強い人気がある『深夜食堂』(制作・MBS=TBS系)も約3年ぶりに第3弾が放送される。30分間の深夜ドラマだから、番組宣伝に派手さはないし、マスコミの扱いも地味だが、このドラマの新作を心待ちにしていた方は少なくないのではないか。

主演は小林薫。役名は分からない。のれんに「めしや」と書かれた食堂の主人で、みんなから「マスター」と呼ばれている。年齢も経歴も一切不明だが、料理の腕は抜群。思慮深い人物で、言動は人生の達人を思わせる。故・山口瞳さんの小説に登場するような大人の男だ。左目を縦断する切り傷のような痕があるが、その理由も分からない。

食堂の所在地は新宿。はっきりとした住所は明かされていない。どうやら、花園神社の近くで、ゴールデン街の一角にあるらしい。店は細い路地にあり、周囲には昭和の匂いを放つ店が並んでいる。

ドラマは、マスターのナレーションから始まる。

「1日が終わり、人々が家路へと急ぐころ、俺の1日が始まる。営業時間は夜12時から朝7時ごろまで。人は『深夜食堂』って言っているよ。客が来るかって? それが、結構、来るんだよ」

メニューは豚汁定食とビール、酒、焼酎だけ。あとは、客の希望に応じ、作れる料理は提供する。食材さえあれば、大抵の料理は作れる。

こう書くと、グルメ・ドラマのようだが、それは違う。毎回、切ない物語に素朴な料理が絡む。

押し付けがましく泣かせようとしたり、感動を呼ぼうとするドラマでもない。どこかで見聞きしたことがあるようなエピソードが続く。けれど、ありふれた話を丁寧に切り取るからこそ、普遍的な物語となって、心のヒダのような部分に染み込み、胸を突かれる。

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