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お家芸の「社内暗闘」も!ゼネラルエディター解任で朝日新聞の「調査報道」は再生できるか

朝日新聞社は9月19日、渡辺勉・ゼネラルエディター兼東京本社編成局長、市川速水・ゼネラルマネジャー兼報道局長を同日付で解任したと発表した。ゼネラルエディターは紙面づくりの現場の責任者であり、ゼネラルマネジャーは編集職場の人事などを統括する役職である。

朝日新聞は9月11日、木村伊量社長が記者会見し、「資料を読み解く過程で評価を誤った」などとして、5月20日付朝刊の「吉田調書」報道を取り消すと発表しており、まず、渡辺氏と市川氏がその責任を取った。「吉田調書」報道を担当した特別報道部の市川誠一部長も同時に東京本社報道局付に退いた。

 注目人事は、毎日の紙面づくりの責任者であるゼネラルエディターの後任に編成局長補佐の長典俊氏(社会部出身)を抜擢したことだ。

暗闘は朝日新聞の「お家芸」

朝日新聞は現在、従軍慰安婦報道検証や池上彰氏のコラム問題、「吉田調書」報道問題で、外部から厳しい批判を受け、部数が落ちるなど存亡の危機を迎えようとしている。そうした危機的状況下にもかかわらず、「調査報道を目指してきた特別報道部を邪魔者扱いしてきた社会部は特別報道部の失敗を喜んでいる。読者からの問い合わせに積極的に『吉田調書は誤報です』と嬉しそうに説明している社会部関係者もいる」(朝日中堅幹部)という。

社会部出身の社長室長と広報を担当する2人の役員がまったくリスク管理できていなかったため、記者会見の設定時期やその内容にも大きな問題があり、結果として社会からの批判が一層強まったーーこうした見方は朝日新聞の社内外に根強くある。

「元はと言えば、従軍慰安婦の記事の誤報も大阪社会部が震源地。社会部は他部の失敗を笑える立場にない」(同)。しかし、次期社長を巡って社会部と政治部の暗闘もあり、社内が一枚岩ではなく「内紛」に近い状態にある。約13年間、朝日新聞に勤めた私の経験から見て、暗闘はある意味で「お家芸」だ。社会部の背後には次期社長を狙う社会部系役員の陰謀も渦巻いている、という話も聞く。

 長氏は司法担当が長く、いわゆる事件記者だが、若い時に横浜支局(現在は横浜総局)で神奈川県警担当サブキャップとして、「リクルート事件」の取材にも関わり、同事件報道を指揮した元横浜支局次長・故山本博氏の「門下生」の一人でもある。

強引な手法の強面記者が多い朝日社会部の中で、冷静に着々と取材を進め、社内政治の「陰謀」とも一線を画すタイプの穏健派かつ常識派と目され、一定の人望がある。東京社会部長を務めた経験はなく、社会部主流派とは距離を置き、朝日特有の出世欲もないと言われている。

解職された杉浦信之取締役に代わって編集担当に就いた西村陽一取締役(政治部出身)は、ぎすぎすした社内の「中和剤」を期待して起用したと見られる。朝日新聞の記事の信用が著しく低下している中で、取材現場を立て直すには、現状では最適人事と言えるのではないか。

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