糸井重里×安西洋之【第1回】「頭のなかの世界を探検することが、仕事としては一番簡単で、一番奥深い」
安西洋之氏と糸井重里氏
日本企業の99.7%が中小企業であるにもかかわらず、書店には大企業の経営戦略本が数多く並んでいます。ましてや世界の中小企業の事例の本など見つかりません。そこに注目した、ミラノ在住のビジネスプランナー安西洋之さんは『世界の伸びている中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』を執筆しました。本書のなかに日本の中小企業の事例として取り上げられているのが、株式会社東京糸井重里事務所。同社を率いる糸井重里さんと中小企業と仕事しながら中小企業を観察している安西洋之さん。本書のテーマを切り口に繰り広げられたお二人の特別対談をお届けします。(構成/崎谷実穂)

 店の売り子は美人な方がいい?

安西洋之(以下、安西) 糸井さん、「今日のダーリン※1で、今日(取材日)は「売り子」の話を書かれていましたね。売り子というのは、全人間力が試されるような仕事だと。

※1 ほぼ日刊イトイ新聞のトップページにある、糸井重里さんが1999年6月6日の創刊以来毎日更新しているコラム。バックナンバーは残っておらず、アーカイ ブも設けられてはいない。「毎日、更新されて、毎日、消えていくコンテンツ」として『ほぼ日刊イトイ新聞』に掲載されている

糸井重里(以下、糸井) 今日は安西さんとお会いするので、安西さんの本を意識して書いたんです。

安西 そうだったんですか! すごく興味深かったです。ちょっと斜め方向からの質問になるんですが、美女はいい売り子になると思いますか?

糸井 そうですねえ。美人だからこそ、うまくいく要素は当然あると思いますよ。でもそれは同時にじゃまになる要素でもある。美人だから敬遠される、ってこともありますからね。いい売り子になるかどうかと美人は関係ないんじゃないかな、と思います。

安西 糸井さんって、女の人が美人かどうか意識したりしないんですか?

糸井 しないですね。僕は、「美人」を仕事にできるほどの美女がいたとしたら、それってある種の異常だと思ってるんですよ。つまり、「落ちこぼれ」があるように、数値が上にオーバーしてる「吹きこぼれ」っていう状態もあるんです。その状態ってちょっとかわいそうですよね。でも、美人かどうかは別として、僕は女性っていいなあ、と思っていますよ。

安西 そういえば、糸井重里事務所のCFOは女性ですね。

糸井 もともと6年前くらいに僕が、うちの会社にはCFOが必要だと思いはじめて、その役職についてくれる人を探したんです。でも、紹介された人と会うと「財務はあなたの不得意な分野だけど、僕はわかってますよ」とアピールするような人ばかりで、どうも違うなと思っていました。そうしたらある日、「そうだ!女の人だ!」と天啓のようにひらめいたんです(笑)。

安西 それで、女性に限ってCFOを探した(笑)。

糸井 そう。で、篠田さんを紹介してもらったら、もう「この人だ!」と。性別でいいわるいを分けるわけじゃないんですが、男同士だと向こうが「なめるなよ」と力を誇示しているように感じて、僕も財務のことはよくわからないから「ははあ」とひれ伏しちゃうんです。女性が相手の方が、僕も本当のことを言える。というか、僕はやっぱり根本的に女性が好きなんです。こういうと誤解を受けそうなんですけど(笑)。

安西 と言いますと……?(笑)

糸井 若いときにこれを言うと「えっ」って言われたんですけど、年をとると「ほんとかも」と思われるようになってきましたね。いや、わかってもらいたいんだよなあ、この感じ(笑)。女性に対して全体的に好感を持っているんですよね。それは、道を歩いている時にも思います。