田端信太郎さん【前編】 「『じゃんじゃん広告費を使えば大丈夫』という時代は、もう終わりました」
『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』著者に聞く
[左]藤野英人さん、[右]田端信太郎さん (撮影:福田俊介)
カリスマファンドマネジャー・藤野英人氏が注目の新刊の著者と対談し、企画と執筆の裏側に切り込む新連載、第2弾は『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』共著者である、LINE株式会社上級執行役員の田端信太郎氏。このタイトルに込められた意味、そして、これからの広告やメディアのあるべき姿とは? 本書同様にざっくばらんに話していただきました。<構成・田中裕子>

日本の問題は、マーケターのプロ化がまったく進んでいないこと

藤野 話題の本の著者に会いに行く企画、第2回目は『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』共著者の田端信太郎さんです。よろしくお願いします。

田端 藤野さんとお会いするのは4回目ですよね。最後にお会いしたのは、僕がコンデナストからLINEに転職するときの転職パーティでしょうか。

藤野 そうそう、僕、田端さんとそんなにお話ししたこともなかったのに、なぜか発起人になって(笑)。今日はあらためて、広告やメディアについて、田端さんの視点で面白いお話が伺えるのではないかと思っています。

早速ですが、このタイトル、長いだけでなくだいぶ刺激的ですよね。書店の店頭で「えっ?」と思って手にとった方も多いのではないでしょうか。

田端 より正確に言うと、『広告やメディア「だけ」で人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』なんです(笑)。旧来の広告やメディアを全否定しているわけではないのです。

藤野 なるほど。田端さんはこの本が2冊目となりますよね。前作はメディアの正体や影響力について書かれたものでした。

田端 1冊目の『MEDIA MAKERS』は、どちらかというと「メディアの作り手」に向けて書いた本でした。ただ、今回の2冊目はもっと裾野を広げたいと考えて。企業のマーケティング担当部署にいる方、つまりバイサイド(広告の買い手側)の方に読んでいただきたいと思って書きました。

広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』
著者= 本田哲也、田端信太郎
ディスカヴァー・トゥエンティワン / 定価1,620円(税込み)

◎内容紹介◎

企業発信の情報よりも、売るための世論=空気をつくることが大事と説く『戦略PR』の著者・本田哲也氏と、数々のメディア立上げに携わり、現在大ブレイク中のLINE仕掛人としても知られる田端信太郎氏がタッグを結成。大々的な広告キャンペーンやメディア展開をせずに人を動かすことに成功した事例を、1000人、1万人、10万人、100万人、1000万人、1億人、10億人と、スケールごとに分析。そのヒットの秘密を探っていきます。!

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藤野 なぜ裾野を広げようと思ったんですか? 前作からの2年間で何か思うところがあったのでしょうか。

田端 いくら代理店やメディア関係者のリテラシーがあがったところで、バイサイドのリテラシーが上がらないとどうしようもない、と何度となく感じたからですね。端的に言うと、日本はマーケターのプロ化が進んでいないんです。

藤野 プロ化?

田端 アメリカでは、優秀なマーケターはマーケターとしてキャリアを作るのが普通です。一方、ジョブローテーションすることが多い日本企業では、なかなかマーケティングだけに精通した人が現れません。代理店の担当者のほうが担当企業のマーケティングについてこれまでの歴史や文脈を熟知している、ということも少なくない。

そうすると、言葉は悪いですが、代理店にいいようにやられてしまいます。そこを是正していきたい、という気持ちから書いた本でもあるんです。「じゃんじゃん広告費を使えばオッケー」という時代は、もう終わりましたから。

藤野 テレビへの依存は終わった、とよく言いますね。

田端 巷にあふれる情報の量が格段に増えたことや、HDDレコーダーが普及したことで、いわゆるゴールデンタイムがなくなりました。テレビに限らず情報の発信者と受信者だと、受信者のほうがだんだんと「主権」を持つようになってきました。

みんなが求めるものよりも「僕にとってはどうなのか」という個への深いアプローチが、メディアには必要になってきた。もはや、受信者をコントロールしようというスタンスを捨てなければいけないんです。

藤野 けれど企業の人は、「SEOを使うと顧客獲得の費用対効果が高い」と聞くとそちらにどっと流れ、「次はSNSがくるらしい」と聞くとまたそちらにどっと流れてしまう(笑)。

田端 何か新しいものが出てくると「祭り」みたいになる。そこでこつこつやっていた人もいるのに、みんなで一斉にやってきて踏み散らかしていく。下手なサッカーと一緒なんですよ。ボールがあるところだけに、みんなが集まってきて、何がなんだかわからなくなる(笑)。

藤野 あはは、確かに。

田端 もうそんなことが起こらないように、という願いも込めてこの本を書いたんです。企業側のサイレントマジョリティのリテラシーが上がれば、そんな焼き畑農業みたいなビジネスはまかり通らなくなるはずです。

そもそも、そんなに検索エンジンの費用対効果が高いのなら、TOYOTAやソフトバンクもすべてネット広告に移行するはずでしょう? 投資用マンションの営業電話に対応するのと一緒です。「そんなに儲かる投資物件ならあなたが買えばいいじゃないですか」っていう。そうしないということは、そういうことです(笑)。

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