6つの学校で、全国大会30回出場、全国金賞14回獲得し、「吹奏楽の神様」とも称される屋比久勲氏。
屋比久氏が実践してきた、怒ることなく子どもたちの力を伸ばす教え方を紹介する。
⇒その(1)はこちらからご覧ください
みんなをやる気にさせるには、何かの時に褒めることです。
例えば、スリッパをわざと僕が右左をちょっと離して脱いでいたら、パッとスリッパを左右きちんと並べる子がいました。
それをみんなの前で、「今日、先生のスリッパをパッとすぐに直した子がいて、みんながそうだといいねぇ。でも、何名かはやらない人もいるんじゃないの? みんなができるともう最高の部だよね」と褒めます。
こういう話をしたら、みんな「ああ、やろうかな」という気になる。
他の人が見ているときはルールがあるのでやる子は多いかもしれませんが、誰もいなくてもやるようにと生徒には教えています。よい意味で身体に染みつかせます。
でも新しく入ってきた1年生は、当然いきなりはできません。だけどやはり先輩がやるのを見てできるようになる。
もちろん1年生が入ってくる前に、先輩たちに「あなたたちがやるのを見て1年生は育つから、きちんと親切にして喜ぶようなことは進んでやらないとね」と教えています。
先輩がきちんと見せてあげれば、1年生もついてくる。すると、1年生が入ってくる度にいちいち説明しなくてもよい。そのサイクルをつくるのが指導者の役目です。
僕が指導するバンドでは、みんな褒めてあげるから嫉妬はありません。
ただし、褒められる回数に差はつけてはいけない。ちょっとでも生徒が良いことをしたら褒める。その上で、同じ人を何度も褒めない。
お客さんが来た時に荷物を持ってあげたり、あるいは靴をそろえてあげたりなど、良いことだったらすぐにみんなの前で言って拍手し褒める。
もちろん演奏に関係ないことでも褒めます。こういうことがきちんとできたら、演奏もちゃんとできます。後は、どちらを先にするかが問題なだけです。
僕の中でこれは信念にしていますが、勉強でもなんでも最後は本人がやろうと思わないとダメです。だからやる気にさせる指導をする必要がある。
そのためには、いろいろな面から遠回しに言ってあげたり、良い生徒がいたら、褒めたうえで、よいところを具体的に説明しないといけません。
過去には、授業中にお弁当を食べたり、授業を全く聞いていなかったりする問題児もいました。
でもそういう子でも、部に来たらきちんと練習をします。本当に普通の子です。
なぜ教室ではやんちゃな子が部に来たらしっかりやるのかというと、先輩たちがしっかりしているからです。別に先輩が厳しいわけではないけど、どんな生徒でもみんな先輩は先輩で従っています。
そういうしっかりとしたルールというか、考え方、意識をみんな持っている。
だから、僕はいつも生徒に「叱られて100点より、叱られない60点がよい」と言います。
叱られたり強制されたりすれば誰でもやります。でも叱られて100点よりも自分で考えて60点の方が、僕は価値があると思います。
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屋比久勲・著
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「子どもたちの力を伸ばすのに怒る必要はない」
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