賢者の知恵
2014年10月02日(木) 林 寛之

「便秘には下剤 or 浣腸」だと思わぬ病気を見逃す危険性あり---年間2万人が訪れるERを率いる医師が教える 医師でも間違える病気・ケガ・薬の新常識(3)

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〔PHOTO〕gettyimages by Thinkstock

便秘をしたら下剤を使うのはもちろん構いません。ただ高齢者で通常の便秘ではなく、腸閉塞になっている場合、つまり陣痛のように波のように腹痛がおそい、 排便もおならも出なくなって、嘔吐しているような場合には、浣腸は避けた方がいいでしょう。圧が上がって腸に穴が開いて緊急手術になることがあります。

医者でも高齢者の便秘に安易に浣腸をしてしまい合併症を引き起こしてニュースになることがあります。この判断は意外に難しいのです。

便秘の患者さんは多いですが、その原因をきちんと探さずにただ下剤を使うのは危険です。特に腹痛が強い急性の場合は、炎症や血流障害で腸の動きが止まっていることがあります。また卵巣腫瘍など骨盤腔で直腸を圧迫するものがあれば当然排便はしにくくなります。

便がしたくてたまらないのにすっきりせず、お腹が強烈に痛い場合は、骨盤腔に炎症があるかもしれません(感染性腸炎、腹部大動脈瘤、異所性妊娠など)。

腸管の動きが悪くなる病気(内分泌疾患、糖尿病、脊髄損傷、寝たきり)のために便秘になっている場合は下剤を使う方がいいでしょう。

忘れてはならないのは薬剤性便秘です。薬の副作用の便秘に対して下剤を追加すると言うのは本末転倒であり、原因となる薬剤をやめればいいだけです。

高齢者は皮膚が乾燥しやすく、かゆいからと言ってかみ止めなど漫然と内服している時がありますが、抗ヒスタミン薬には抗コリン作用があり、腸の動きを抑えて便秘にしてしまいます。医者もその辺りに気を配っていないことがあり、高齢者に抗ヒスタミン薬を漫然と処方しないように勧告も出ています。

風邪薬にも抗ヒスタミン薬が入っていますし、胃薬にも抗コリン薬があり、三環系抗うつ薬も抗コリン作用があります。便秘を来たしやすい薬には他に抗パーキンソン薬、睡眠薬、利尿薬、向精神薬、抗痙攣薬、抗アレルギー薬・・・・・・もうゲップですね。これら薬をやめられない時もあるのでその際は下剤を併用します。

痛みがなければ大丈夫かと言うと、そうでもありません。大腸癌で便が細い、出にくいというのに、下剤ばかり使って軟便状が出せればいいやと放っておくと癌が進行してしまう場合があります。

特に体重が減ってくる場合、家族歴で大腸がんがある場合、喫煙者、便が細くなってきた場合、50歳以上で初めての便秘、便に血液が混じる場合は要注意です。

小児の腹痛の約半数は便秘が原因です。浣腸一発ですっきり解消という経験を皆さんもお持ちではないでしょうか。

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