原発推進に向けてひた走る安倍政権の戦略
『古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン』 vol.103 日本再生のためにより
【はじめに:新著『国家の暴走』は単純な安倍政権批判本ではありません】

9月10日に角川新書から『国家の暴走 安倍政権の世論操作術』を出版しました。
安倍政権の外交・安保政策を中心テーマとし、雇用政策についても焦点を当てた本です。第4象限の党、改革はするが戦争はしない政治勢力の話も入っています。

企画段階では、この本は売れないのではないかという声もありました。あまりに安倍政権のワンサイドゲームが続き、嫌韓、嫌中、あるいは日本礼賛の本がバカ売れする状況で、安倍政権批判の本は売れないのではないかというのです。
確かに、そういう雰囲気は感じます。

ただ、この本は、単純な安倍批判の本ではありません。冷静に大きな視点で安倍政権を見ていく中で、私たち国民が気づいていないことがあまりにも多いのではないかという点を主題にしていると言っても良いと思います。それはマスコミに対する警告でもありますし、私自身の反省も含まれています。

9月12日頃には店頭に並ぶと思いますので、是非手にとっていただき、面白そうだと思ったら読んでいただければと思います。また、読後の感想を教えていただければ嬉しいです。

アマゾンなどで買っていただいた方は、是非、書評をそのサイトに書き込んでいただければと思います。皆さんからのメッセージを世の中に発信していただきたいからです。

ちょっとPRめいてしまいましたが、一人でも多くの方に、今の政治の状況に問題意識を深めていただきたいという気持ちで紹介させていただきました。

なお、今回は、ページ数の都合で、原発関連の内容は最終的には落として出版することになりました。現在、別の企画で原発の本を書いています。もう少しお待ちいただければと思います。

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九州電力のwebサイトより

内閣改造などの話題が大きく取り上げられる中、安倍政権の原発推進の動きはどんどん加速されている。11日には、九州電力川内原発(鹿児島県)1、2号機について正式に安全審査合格を決定した。それだけではない。関西電力高浜原発(福井県)3、4号機と九州電力玄海原発(佐賀県)3、4号機について地震想定が決まった。両原発の審査合格への道筋がほぼ確定したといっても良いだろう。川内原発については、これまで何回も書いてきたとおり、再稼動を認めるのは全く不当だとしか言いようがない。何とかして、再稼動前に、現在進行中の差し止め訴訟で運転を止める判断を裁判所が出してくれることを祈りたい。もちろん、私たちも最後まで諦めずに反対の声を上げ続けなければならない。

ここで原発関連の動きを全部取り上げる余裕はないが、いくつかの事例についてコメントしたい。そこで重要なのは、安倍政権が、原発推進のために、極めて総合的な施策を進めていることだ。

ついに出た本命 原発の電力の買い取り価格保証制度

先月のメルマガで書いたとおり、経産省や電力会社が、「原発は高い」ということを事実上認める政策を進めようとしている。廃炉、汚染水、除染、何から何まで税金と電力料金に上乗せする動きはその後も続いている。その結果、今後も続々と電力料金値上げの動きが出ることが予想される。

そして、先月、ついに、最終兵器が正式に世の中に出て来た。
それは、一言で言うと、

――電力自由化が進むと、いろいろな電力会社が競争することになり、原子力発電による電力が、そのコストに見合った価格で売れる保証がなくなるので、赤字になるかもしれない。それでは困るので、その赤字分だけ電力需要家(消費者、企業)に電力料金として上乗せして請求することを認めよう――

という話だ。

実は、これと類似の制度が、今年から英国で導入される。英国は、地震がほとんどないこともあり、福島事故後も、突出した原発推進路線を採る珍しい国だ。しかし、他の欧州諸国同様、安全基準厳格化によって、原発のコストが高くなり、民間事業としては成り立たなくなった。そのため、政府が特別の助成措置を認めたのである。もちろん他の欧州先進国にこんな馬鹿げた制度はない。

そして、この制度に乗って原発を英国内で作ろうとしているのが日立と東芝だ。他の欧米企業は、みんな逃げてしまったのに、日本の企業はいまだに原発にしがみついているのがよくわかる。

この英国の制度が昨年来話題になっていたのだが、当初は、この話は原子力ムラの住人にとって、痛し痒しだった。「英国がやってるのだから日本も原発に補助金を出そう」と言えそうだが、一方で、原発が火力や水力などに比べて高いということを認めることになる。昨年来、日本ではエネルギー基本計画の策定作業が続いていたが、その議論の中で「原発は安い!」と叫んでいた原子力ムラとしては、英国の制度は、原発が高いという証拠になってしまうので、「極めて不都合な」制度であった。そのため、経産省などは、この制度の議論をひたすら隠してきた。何故なら、この制度の存在が知れて、やっぱり、先進国では、「原発は高い」というのが常識なんだということが露呈し、「だったら、原発は止めろ!」という議論になるのが怖かったからだ。

しかし、その後、「エネルギー基本計画」が今年の4月に閣議決定されて、状況は大きく変わった。エネルギー基本計画の中で、原発は「重要なベースロード電源」であると宣言され、原発の存続が国の正式な方針として確定したからだ。原子力ムラは、閣議決定後すぐに、「原発は重要なんだから維持が必要ですよね。でも、原発は事故の補償、廃炉、核のゴミ、いろんなコストがかさんで民間では維持できないんですよ。だから、税金か電力料金によるサポートが必要ですよね」と言い出した。つまり、原発が高いと公言し始めたのだ。

そして、8月下旬の経産省の審議会で、この制度の話が正式に検討の俎上に上がった。
つまり、「原発はどんなに高くても維持する」という宣言をしていることになる。
これを前提にすれば、今後、原子力ムラは、あらゆるコストを「実はこんなにかかるんです」と言って申告できることになる。

その動きはあらゆる分野でいっせいに表に出てきている。廃炉コストのつけ回しについて、有識者会議を設置する。事故が起きた時の電力会社の損害賠償の負担を軽くしたり、免責にしてあとは税金につけ回しするための有識者会議も設置する。原子力損害賠償支援機構を改組して、廃炉に税金を投入して支援する制度も始まった。福島の事故による汚染土の中間貯蔵施設の建設に関連して3000億円の地元支援も決まったが、これは、本来は東電が負担すべきものだ。

実は、エネルギー基本計画には、原発は安いとは書いていない。「運転コストが低廉」という表現だけにとどめてある。つまり、建設コストや事故、廃炉、ゴミ処理のコストまで含めた総コストについては最初から触れていないのだ。これこそ国民を欺く安倍政権の手口だ。

何故SPEEDIを使わないのか それは再稼動のため

原子力規制委員会は、SPEEDI(放射能拡散予測のシステム)に関する予算を大幅に削減することを明らかにした。SPEEDIでは、正確な拡散予測をすることが難しいという理由で、むしろ実測値を重視する方針に切り替えるという。

これに対して、実測値が出てからでは遅いとか、福島の事故の際にSPEEDIの予測は、その後判明した実際の汚染状況とかなりの程度整合的で、これを使っていれば、無用な被爆を避けることができたはずだといった批判の声が出ている。

しかし、この件のポイントは他にある。SPEEDIの信頼性をことさら低く評価する規制委の真の狙いは、再稼動を円滑にするのが目的ではないかと私は考えている。

SPEEDIによる拡散予測を各原発ごとに行なうと、30キロ以上の範囲で放射能汚染が広がることがわかっている。そうなると、現在、30キロ圏内で作ることになっている住民の避難計画を50キロ、あるいはそれ以上に広げろという議論が出てくる。現にそういう声は周辺自治体住民の中に強い。

しかし、仮に30キロ圏を越えた広い範囲で避難計画を作ろうとすれば、ただでさえ困難な策定作業はさらに難しくなり、ほとんど実現不可能になってしまうと考えられる。

そこで、SPEEDIというのはそもそもほとんど当てにならないのだ、ということにして、SPEEDIの予測結果を住民の避難計画に使用することを止めさせようということを原子力ムラは規制委に強く働きかけたのだと考えられる。・・・(以下略)

・・・・・この続きは『古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン』vol103(2014年9月12日配信)に収録しています