AI
実用化に近づくスパイキング・ニューラルネット: 脳波まで再現する究極のAI(人工知能)
〔PHOTO〕Thinkstock by gettyimages

21世紀に入って著しい進展を見せるAI(人工知能)の開発で、最近、新たな潮流が生まれている。それは「スパイキング・ニューラルネット(Spiking Neural Network)」だ。

スパイキング・ニューラルネットは、私たち生物の脳の神経回路網(生物的ニューラルネット)を工学的に再現した(人工的)ニューラルネットの次世代モデルだ。従来型ニューラルネットの中で今、最も性能が高く、グーグルやフェイスブックを始めとした多くのIT企業が導入しているのは、「ディープ・ニューラルネット」あるいは「ディープラーニング」などと呼ばれる多層ニューラルネットだが、スパイキング・ニューラルネットはさらにその先を行くものだ。

ニューロンの活動電位を人工的に再現

スパイキング・ニューラルネットは従来のニューラルネットと具体的にどこが違うのか?それは私たちの脳を構成する神経細胞が発する活動電位(スパイク)までも人工的に再現して、これを時間的な波形(パルス)としてニューラルネット上で再現したことだ。脳の内部で、無数の神経細胞(ニューロン)やその接合部(シナプス)が発火(活動)するときに出す活動電位は、医学的には、いわゆる「脳波」として観測される。従って、(非常に荒っぽい言い方をすると)スパイキング・ニューラルネットとは、人間の脳波までも再現しようとする究極のAIだ。

とは言っても、実用化はまだ何年も先の話だろう---そう思われる方も多かろうが、実はすでに試作機レベルにまで達しており、数年以内には実用化される見通しだ。たとえば先月、米IBMが開発に成功したと発表した「TrueNorth」と呼ばれる「ニューロモーフィック・チップ(神経形態学的プロセッサ)」は、スパイキング・ニューラルネットを実装した最初の製品だ。

従来のニューラルネットはコンピュータ・プログラム、つまりソフトウエアとして実現されてきた。しかしスパイキング・ニューラルネットのように脳の活動電位までも人工的に再現しようとすると、ソフトウエア的に実現するのは不可能に近い。残された道は、TrueNorthのようにハードウエアとして1チップ化することだが、ここまで来ると、もはや、単なる「AI(人工知能)」というより「人工頭脳」を実現する方向に向かって科学者たちが歩み始めたと見ていいだろう。

モバイル端末用のプロセッサ開発で世界をリードする米Qualcommも今、スパイキング・ニューラルネットを実装したチップの開発を進めている。こちらも早ければ今年中には試作機を完成させ、おそらくは端末メーカーや通信キャリアに向けてリリースすると見られている。これらの会社が、スパイキング・ニューラルネットを実装したスマホなどの開発を手掛けるというわけだ。

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