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「講座:ビジネスに役立つ世界経済」
【第59回】 ドル円レートの落ち着きどころを考える

〔PHOTO〕gettyimages

今後の金融政策の違いがドル高を加速する

このところ円安が進行し、現在1ドル=107円台で推移している。民主党政権末期に1ドル=77.5円程度まで円高が進み、日本経済に大きな打撃を与えたドル円レートは、野田首相(当時)の衆議院解散発言から安倍政権による金融緩和を軸とした「アベノミクス」によって、約半年の間に1ドル=103円程度の円安が一気に実現した。

その後は、円安のペースが減速し、今年に入ってからは、1ドル=101円から103円程度の狭いレンジでの推移を繰り返し、為替市場関係者の間では1ドル=100円割れのリスクが指摘される状況であった。だが、8月中旬頃からドル円レートは再び円安方向で推移するようになり、9月に入ってからその流れが加速しつつあるようだ。

円安の理由は先進主要国の今後の金融政策の違いに起因していると考えられる。すなわち、米国FRB(連邦準備制度理事会)のゼロ金利解除の前倒しの可能性、ECB(欧州中央銀行)による量的緩和政策の採用、そして、日本銀行の追加緩和の憶測である。その中でもFRBのゼロ金利解除の前倒しの要因が今回の円安に大きく作用しているようだ。そして、ドルは円以外の他通貨に対しても強含みで推移している。

FRBは10月に現在の量的緩和の段階的縮小(いわゆる「Tapering」)を終える。その後は、景気の回復を待ち、来年7月以降に利上げ(ゼロ金利政策の解除)を実施するというのが従来のコンセンサスであった。

だが、直近の経済指標の多くが市場関係者の想定を上回る改善を示しており、これが米国経済の加速度的な回復を示唆するものとして取り沙汰されている。さらに、FOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録でも数人のメンバーがゼロ金利解除の前倒しを主張しはじめていることが示され、ゼロ金利政策の解除の思惑が一気に高まった。

一方、ECBはユーロ参加国で広がるデフレの流れを断ち切るために、ドラギ総裁が量的緩和も辞さぬという姿勢を明確にしている。前回のECB理事会では、詳細はこれから詰めるとしながらもABS(証券化商品)やカバードボンド(企業が資産を担保にして発行する債券)を購入する用意があることが正式に発表された。

そして日銀は、来年10月から予定されている消費税率引き上げによる景気失速を回避するための政策協力としての追加緩和の思惑が広がっている。先日も、安倍首相と黒田日銀総裁の会談が開かれたが、その際に追加緩和が議題に上がったかもしれない。

以上のような将来にわたる金融政策の方向性の違いが、ドル高と同時にユーロ安、円安の流れを作りだしているというのが現状であろう。さらに、ウクライナ情勢に絡むヨーロッパ諸国対ロシアという地政学リスクの台頭に加え、イギリスではスコットランド独立問題がにわかに盛り上がり、これまでのポンド高の流れが一気にポンド安に転換したことも、ほぼ一方的にドル高の流れを加速している一因であろう。

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