社会の出来事、自分の周辺の出来事、個人史のメモをまとめた年表や「車歴年表」など自分史年表の具体例を紹介
立花隆著『自分史の書き方』---第2章 自分の年表を作る(2)

「立花隆の自分史倶楽部」では、立花隆氏の著書『自分史の書き方』を参考にして「自分史」を書いた方の投稿を募集しています。
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「これからの人生(セカンドステージ)のデザインになにより必要なのは、自分のこれまでの人生(ファーストステージ)をしっかりと見つめ直すことである。そのために最良の方法は、自分史を書くことである」。(『自分史の書き方』より)

熟年層や就活生を中心に昨今ひそかなブームとなりつつある「自分史」。自分の人生を知る最良の方法でもあるこの自分史の書き方のノウハウを、「知の巨人」立花隆氏が一冊の本にまとめたのが、その名もズバリの『自分史の書き方』(講談社刊)である。その一部をご紹介していきたい。

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第2章 自分の年表を作る(2)

人生を4つの軸で表現――山本和孝さんの年表

では、自分史の具体例を今度は自分史年表とともに紹介してみる。

最初の例は、山本和孝さん(62歳)のもの。山本さんは法政大学経営学部を1969年に卒業する前、林周二『流通革命』(中公新書)の影響を強く受けて、流通業界に身を投じた。東光ストア(現在の東急ストア)に入社。企画調査部長、人事部長、雑貨部長などを歴任。湘南店長を経由して、取締役までつとめた。子会社の東光ドラッグの社長を2年間つとめたところで退任。

96~97ページの図に示すように、山本さんの年表は、4つの軸から成り立っている。「その年毎の主な出来事」と「よのなかのヒト・コト」が社会一般の出来事。「半径5メートル以内の人達」が家族、先生、友人など個人的に深い関係にあった人々との間に起きた出来事。そして「私ごとですが」が、個人史のメモである。このうちで「半径5メートル以内の人達」というのは、山本さん独特のカテゴリーだが、面白いコンセプトだと思う。人間にはそれぞれの文化によって特有の(あるいはその個人によって特有の)、「他者を許容できる近接距離」というのがあって、その距離内に他者が近づこうとすると、思わず身を引いて、相手との距離をその距離以上に保とうとするものである。反対に必要以上にその距離をとろうとすると、人づきあいの悪い、よそよそしい人間と見られたりする。

この距離感覚は、個々人によって、また生まれ育った文化によって、著しくちがうもので、それをテーマとして書かれた、文化人類学上有名な学術書(エドワード・ホール『かくれた次元』みすず書房)もある。日本人は、挨拶をするにしても、直接の肉体的接触を避けて、ちょっと離れて頭を下げあう程度にするのが普通で、欧米人のように、互いに抱きついてハグしあったり、頬ずりしあったり、接吻しあったりなどはしないのが普通だ。

そういう文化圏において、5メートル以内というのは、どういう距離感かというと、「顔認識、表情認識、ことばによるコミュニケーションが簡単に成立する空間」といえるだろう。幼稚園、小学校などでの「小教室的コミュニケーション」が成立する空間といってもいいかもしれない。人間関係でいえば、家族ないしは、「家族的親しみをもって接しあえる相手との共有空間」といった感覚だろうか。第3章で詳しく述べる「人間関係クラスターマップ」を作るときに、各時代で自分といちばん親しくしていた人間をまとめて入れておくべき「最近接クラスター」の人々といってもいいかもしれない。どう名前を付けるにせよ、どんな人にも、いつでも何でもしゃべりあえる仲の人がいるものだが、そういう仲の人との共有空間といっていいだろう。

山本さんの年表は、自分で描いたイラストと、各種画像資料を駆使してのコラージュがなかなかうまくできていて、簡略ながら、全体がよく見渡せて楽しめる年表になっている。

立花隆・著『自分史の書き方』第2章 自分の年表を作る(94頁~97頁)より

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