明確なゴールのある勉強について、技法とメンタル両方の面で優れた方法論が書かれている 『東大首席弁護士が教える超速「7回読み」勉強法』

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」 読書ノートより

読書ノート

◆山口真由『東大首席弁護士が教える超速「7回読み」勉強法』PHP研究所、2014年7月

勉強には、「公務員試験に合格する」、「英検準1級に合格する」などの明確なゴールがあるものと、「哲学的思考を身につける」「ロシアの政治エリートや知識人にも一目置かれるロシア語を話せるようになる」というような明確なゴールのないものがある。

明確なゴールのある勉強についての方法論として、本書は、技法、メンタル面の管理の両面できわめて優れている。

まず技法について、山口氏はこう述べる。

<「7回読み」という方法は、どんな適性を持つ人にもフィットする、と述べました。
しかし疑り深い(?)方は、こんな疑問を持たれるかもしれません。
「文章の要旨や本質をつかむセンスがなければ、何回読んでもダメなのでは」
この疑問には、ハッキリ 「NO」とお答えしたいと思います。
「書かれているもの」を理解することは、どんな人にも可能です。
文章は、一見どんなに難解なものでも、意味がありさえすれば、必ず理解できるものです。7回でダメなら10回、10回でダメなら20回読めばいつかはわかります。
そう、センスや才能ではなく、回数の問題なのです。

確かに、難解な文章を一読しただけですぐに要旨をつかめる人なんて、おそらくほとんどいません。この章の冒頭でお話ししたとおり、「天才」はほとんどいないからです。難解な文章を一読しただけで、要旨をつかんでいるように「見える」人。それは読解のセンスというよりも、活字、特にその分野に関する著作をどれだけ読んでいるかという経験に負うところが大きいように思います。活字に触れれば触れるほど、反応は速くなっていくのです。>(38~39頁)

受験勉強の場合、通説が網羅的に記された本を複数回読み、その内容を暗記し、復元するのが最も合目的的な勉強の仕方だ。この方法を徹底すると山口氏が提唱する「7回読み」勉強法になる。ちなみに聖書の世界では、7は完全数なので、「7回読め」ということは、徹底的に読めという意味だ。

この勉強法で重要になるのは本選びだ。意味が不明瞭で、真偽不明の独自研究が含まれている本をこの方法で勉強しても意味がない。批判的な作業を伴う勉強に、この「7回読み」は適していない。

勉強をするにあたってのメンタル面の助言は、いずれも傾聴に値する。最近のエリートに多い、学校秀才だったときの「昔の栄光」にすがり、「俺/私は、あえて実力を出していない」というタイプを山口氏は以下の論理で厳しく切り捨てる。

<「きっとできる。だからやらない」というマインドの新人がそのまま年を重ねてしまうと、状況はさらに悲惨なものになります。育ってしまったプライドの高い壁はいかんともしがたく、そしてそのプライドを守るために、自分が評価されないのは、ひとえに社会のせいと思って、拗ねてしまう。

もちろん、すべて自分の責任と思い込んで心を痛める必要もないですが、評価されていないとしたらその責任は、だいたいは個人が半分、社会が半分くらいの痛み分けだと思います。それを、すべて社会のせいにしてしまったら、自分を省みて成長しようという意欲は、そこで止まってしまうことになります。

残り長い人生を、ずっと世を拗ねて、斜に構えて生きていくなんて絶対に嫌。そうならないためには、「根拠なき自信」を前向きな方向にコントロールしていくことが、とっても大切なのです。>(31頁)

外務省にも、「きっとできる。だからやらない」というマインドのキャリア官僚がたくさんいた。山口氏の指摘は、その通りと思う。「拗ね者」が外交に従事してうまくいくはずがない。

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
・山口真由『天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある』扶桑社、2014年1月
・柳川範之『東大教授が教える独学勉強法』草思社、2014年7月
・佐藤優『「知」の読書術』集英社インターナショナル、2014年8月

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol044(2014年9月10日配信)より

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