安倍首相のブレーン浜田宏一内閣官房参与に聞く「消費増税と法人税引き下げの行方」

2014年09月12日(金) 長谷川 幸洋
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「炭素税」の導入で企業にも負担を

ーーー少し大きなテーマについても聞きたい。最近、米国では成長の果実が家計に回る「トリクルダウン(したたり落ちる)」の考え方について懐疑的な見方が強まっているようです。私自身は米国の格差問題は日本とは桁違いで、少し事情が違うと思いますが、これについてはいかがですか。

浜田:米国では、所得減税がすごく急激に実施されましたね。ブッシュ大統領もレーガン大統領がやったのをさらに進めた。かといって、貧困地帯が良くなったようにも思えない。どちらかといえば、ウォール・ストリートを阻害しないけれども、社会のことも考えていくというクリントン大統領の時代に、米国が良くなったんですね。

アベノミクスの第1期については、トリクルダウンであるのは事実なんですね。まず輸出産業が良くなって、その後、株価が上がって、最初に利益を受けたのは外国人とか金持ちの投資家だった。それがスタートで、次に時間外賃金の上昇といった形でパート・アルバイトの労働市場に波及している。でも、まだ実質賃金が上がらず、みんなが喜ぶような状態にはなっていない。

いまは単純労働者の賃金が上がっていくような技術進歩の過程にないので、トリクルダウンの成果はアベノミクスでも遅いと思いますが、過去15年間、大卒が就職に困っていたような状況と比べると、充分でないかもしれないが、日本も明るさが見えてきて、だんだん庶民にも経済成長の恩恵が降りてきている。つまり、第1の矢はトリクルダウン効果がより具体的に現れて国民生活を潤している。それは、みんな認めています。

ただ消費税を低く抑えて、かつ法人税をいまのままにして、それで投資がこないでもいいかといえば、やはりアベノミクスの方向性には国民の支持があると思います。

法人減税を通じて経済を活性化するのは米国の政策に近い。それがすぐに庶民に回ってくるかどうかは分かりません。しかし、だからこそ企業も犠牲になってください、と言うのです。総論賛成で法人税は下げろ、しかし自分の特別措置は残してくれ、というのは企業のエゴそのものと思います。

もう1つ言いたいのは、財務省は経済を刺激しても税収は増えない、という計算が好きなんですよね。税率を何%上げるか、というようなことばかり計算している。消費増税でも消費が減るのはあまり考えない。法人税も下げれば、課税ベースは増えていきます。相手国を出し抜いて下げられれば、そこで投資量が増えるのです。いまより法人税率が低くなったときに投資が動く弾性値はすごく大きい。

そう言うと「理論はその通りだが、実際は違う」と言われます。アベノミクスを始めるときにも、多くの人から言われましたが、やってみたら理論が言うとおりに効いているし、金融緩和についても理論が効かなくなるのはどういう条件の時か、ということを考えながら発言してきたつもりです。だから、法人税についても財務省内だけで通用する論理でなく、経済学の普通の論理を認めてほしい。

消費税も法人税も課税すると、経済効率にマイナス(死重)を与える。いまのように完全雇用に近くなると、価格に課税すると価格のシグナル効果にマイナスがある。それが強くなるわけですね。

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