ハリー・ポッターの世界が日常!? 800年以上の伝統息づくオックスブリッジの生活
ピーターハウスのフォーマルホール。キャンドルライトの中のハリーポッターのような食事風景が、実は毎日行われている。

連載第1回目の前回は、カレッジ制度とその中で展開されるチュートリアルという個人指導の教授法を紐解くことで、学業面でのオックスブリッジの流儀のエッセンスを紹介した。今回は、その続きとして、課外活動など学業以外の部分から、オックスブリッジの流儀を眺めてみようと思う。

オックスブリッジの流儀Ⅲ:紳士・淑女を育てる社交の場「フォーマルホール」

前回ご紹介した勉強そのもののほかに、カレッジでの全人教育で特徴的なのは、「フォーマルホール」と呼ばれる晩餐会、「社交」の場の提供である。この社交の場は、伝統的な礼儀作法を身につけることを通じて、オックスブリッジの流儀を一人ひとりが培っていく「教育」の場でもある。

フォーマルホールは、カレッジによって毎日だったり週に数回だったりと頻度も異なり、内容もまちまちではあるが、ここでは代表的な例を紹介しよう。

まず、毎回ドレスコードが指定され、男性は原則タキシードかスーツ、女性はドレスを着用する。また、所属カレッジの学生はアカデミックガウンを着用して参加する必要がある。

食前には、プリドリンクとして別室で食前酒が振る舞われる。食事の前には、ゴーンとゴングが鳴り、ラテン語で「グレイス」と呼ばれるお祈りがあって、食事が始まる。ホールでは、キャンドルライトと暖炉が灯された幻想的な空間の中、ウェイターが3皿、前菜、メイン、デザートをサーブしてくれる。そして食後酒であるポートワインで乾杯、その際は「チアーズ(Cheers)」ではなく、「To The Queen(女王陛下に捧げる)」と声をあげることもある。食後は、アフタードリンクとして別室でポートワイン、コーヒーなどが振る舞われる、といった具合だ。映画「ハリー・ポッター」でよく見るホグワーツの食堂での一幕をイメージしてもらえたらと思う。

学生は多くの場面で、たまたま隣の席に座った初対面の人(他学部の学生や先生)とでも、気さくに、かつ知的な会話をする訓練を積むことになる。この場合は自分の専攻や興味、国についての話などが進むことも多く、身近な専門家たちが何をやっているのかを知ることで、日常の会話の中で自然と教養を身につける機会ともなっている。一方、他学部の人たちに自分の専攻の内容をわかりやすく伝える訓練にもなっている。オックスブリッジでは、大学もカレッジも常に著名な研究者や国家元首を含めた政財界のリーダーを招き講義を行っているため、この社交の場では実際のリーダーとの交流の場も数多くある。

貧困・人間開発について研究する、OPHI(Oxford Poverty & Human Development Initiative)立ち上げボランティアをした際に撮った、ノーベル賞経済学者アマルティア・セン教授との一枚。