牧野 洋の「メディア批評」
2014年09月19日(金) 牧野 洋

『殺人犯はそこにいる』著者の清水潔氏が早稲田ジャーナリズムスクールで熱弁【後編】 「調査報道の突破口は『一番小さな声を聞け!』」

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清水潔氏の代表作

【前編】はこちらをご覧ください。

「みんなのためになる」報道

「調査報道のバイブル」とも呼ぶべき『殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』(新潮社)の著者、清水潔氏。6月28日、早稲田大学ジャーナリズムスクールで1時間半以上にわたって熱弁をふるい、「調査報道では『みんなのためになる』という視点を見失ってはいけない」などと語った。

清水氏は現在、日本テレビ報道局の記者・解説委員。以前は写真週刊誌「フォーカス」の記者として活躍、「桶川ストーカー殺人事件」では警察よりも先に犯人を特定し「伝説の記者」と呼ばれたこともある。『桶川ストーカー殺人事件---遺言』(新潮文庫)もジャーナリストを目指す人にとっては必読書だ。

ジャーナリストとしては「新聞協会賞」以外の主要ジャーナリズム関連賞を総なめにしている。雑誌記者時代には「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」「日本ジャーナリスト会議(JCJ)大賞」、テレビ記者になってからは「日本民間放送連盟最優秀賞」「ギャラクシー賞」など。今回の『殺人犯はそこにいる』では「新潮ドキュメント賞」と「日本推理作家協会賞・評論その他部門賞」をダブル受賞している。

清水氏の基本姿勢は「一番小さな声を聞け」だ。事件取材であれば警察など巨大権力ではなく、被害者や遺族ら非権力側の声に耳を傾けるということだ。

非権力側の立場で取材すると、権力側からさまざまな妨害を受ける。北海道警察の裏金問題をスクープした北海道新聞があからさまな圧力を受け、屈していく様子は『真実 新聞が警察に跪いた日』(角川文庫、高田昌幸著)に詳しい。

だからこそ、『殺人犯はそこにいる』は新人記者にとって座右の書となるべき本なのだ。日ごろは夜討ち・朝駆けのサツ回り(警察取材)でヘトヘトになりながらも、常に「本来の報道は違う」ということを頭の片隅に入れておけば、いつかは清水氏のように本物の調査報道に切り込めるはずだ。

本物の調査報道とは、清水氏が強調するように「みんなのためになる」報道のことだ。これは米新聞王ジョセフ・ピュリツァーが創設したジャーナリズム賞「ピュリツァー賞」の理念でもある。同賞の中で最高格の部門は、公益に資するという意味を込めた「パブリックサービス(公益)」部門なのだ。

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