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『殺人犯はそこにいる』著者の清水潔氏が早稲田ジャーナリズムスクールで熱弁【前編】 「世の中を動かす調査報道の出発点は小さな"気づき"」
清水潔氏の代表作

早稲田大学ジャーナリズムスクールでの特別講演

新聞社に入社した新人記者がまずやらされるのが地方支局での「サツ回り(警察取材)」だ。ここでは警察に深く食い込み、捜査情報をいち早く聞き出すことが至上命題になっている。特ダネ競争に勝つためである。

サツ回りは伝統的に新人記者教育の基本になっている。しかし、新聞がもっぱら警察側の情報に頼って事件報道を展開していたら、権力迎合型の記者を育ててしまう恐れもあるのではないか。

新聞は警察など巨大権力ではなく、読者のために存在する。「警察目線」ではなく「市民目線」が重要なのだが、当たり前のことが徹底されないのが新聞界の現状だ。記者教育に事件取材は欠かせないにしても、育てるべきは「事件記者」であって「警察記者」ではない。

どうしたらいいのか。私が上司ならば、新人のサツ回り記者に『殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』(新潮社)を配り、座右の書にするよう勧めるだろう。以前に書評でも書いたことだが、これこそ「調査報道のバイブル」と呼ぶべき本なのだ。

同書は、足利事件をはじめ北関東で起きた一連の事件を「北関東連続幼女誘拐殺人事件」ととらえ、真犯人に迫るルポだ。筆者の清水潔氏は警察と対立しながら足利事件の冤罪キャンペーンを展開し、ついには無期懲役囚として17年半も服役していた菅家利和氏の釈放を実現させている。

私は現在、早稲田大学ジャーナリズムスクールで大学院生を対象に実践的ジャーナリズムを教えている。院生たちに夢を与えるような話をしてくれるのは誰かと考えたところ、真っ先に清水氏の名前が思い浮かんだ。調査報道をテーマに講演してくれないかと打診したところ、同氏は快く引き受けてくれた。

清水氏は「桶川ストーカー殺人事件」では警察よりも先に犯人を特定した「伝説の記者」だ。6月28日、早大の教室内で1時間半以上にわたって熱弁をふるい、国際色豊かな院生9人と活発に議論した。同氏の話の要旨を講演と質疑応答に分けて抜粋し、今週と来週の当コラムを使って紹介したい。

以下は講演部分(読みやすくするために一部編集)。