10月から全ての物品に拡大
訪日外国人対象に消費税 土産物商戦に活気[免税品]

松屋銀座(中央区)地下1階の酒類売り場。壁いっぱいに、日本酒4合瓶がずらりと並ぶ。

日本を訪れる外国人旅行者が昨年、初めて年間1000万人を超えたというニュースは記憶に新しい。今年も外国人旅行者は順調に推移しており、百貨店業界は外国人客への新たな積極策を準備している。10月から、訪日外国人客が免税店で購入する物品にかかる消費税の免税対象が消耗品にも広がり、全ての物品が免税になるからだ。土産物として人気が高い食品、飲料、化粧品類が免税になれば、絶好のビジネスチャンスだ。

2020年の東京五輪・パラリンピック開催の決定や国連教育科学文化機関(ユネスコ)が和食を無形文化遺産に登録した「追い風」もあり、訪日外国人は今後も増えそうだ。

日本政府観光局によると、今年1~6月の訪日外国人数(推計値)は前年同期比26・4%増の626万400人。国・地域別では(1)台湾139万1000人(2)韓国127万6000人(3)中国100万9200人(4)米国44万6300人(5)香港42万1000人――となっている。上位三つの国で約6割を占める。伸び率は中国が88・2%と大きい。日中関係悪化で伸び悩んだ昨年の反動と、航空便の新規就航などが要因という。

日本での消費額はいくらなのか。観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、今年4~6月の訪日外国人1人当たりの旅行支出は14万3942円で、前年同期と比べると7791円(5・7%)増えた。土産物などの「買い物代」が4万9763円で全体の3分の1強を占める。このうち中国人の買い物は12万245円と突出している。消費総額も21万1784円と大きいが、中国人は半額超を買い物に充てていることが分かった。

消耗品で消費税が免税となる対象は、同一店舗での1日の販売額合計が5000円超50万円まで。日本滞在中に消費しないように、包装方法は細かく指定された。袋の場合は、プラスチック製で十分な強度▽無色透明かほとんど無色透明で、中身が確認できる――など。箱の場合は、段ボール製や発泡スチロール製などで十分な強度▽中身の品名などを記載する――ことなどが求められる。袋でも箱でも、開封すればはっきり分かるシールでの封印が求められる。

百貨店は外国人対応を拡充

松屋銀座(中央区)地下1階の酒類売り場は、壁いっぱいに、純米酒など純米系の日本酒4合瓶がずらりと並び、壮観だ=前ページ写真。瓶の総数は約250本。後方からライトが当たり、緑、青、赤を含む4合瓶が映えて美しい。全国から集まった4合瓶の価格は1000円台からあり、1万6000円を超える超高級品も置かれている。

日本酒の人気が外国人の中で高まっており、同店は10月の免税化も見据えて4月に日本酒の売り場面積と商品数を従来の1・5倍に拡大した。そばにある抹茶の売り場も、高級抹茶が欧米系外国人に人気があることから、商品の種類を充実させ、茶釜を置いて試飲できるようにした。

松屋銀座の外国人客による免税品売上額は全体の7%。その半分強が中国人客という。高所得の個人旅行客が多く、高級ブランド製品(バッグなど)や日本製の化粧品などが売れ筋だが、地下1階も人気があるという。「日本ではおなじみの『デパ地下=食品売り場』が、外国からのお客様にはかなり珍しい」(服部延弘・販売促進課長)からで、同店は現在3階にある免税カウンターを10月には地下1階の酒類売り場近くに移設する。スタッフも増員予定だ。

銀座4丁目交差点に面した三越銀座店(中央区)は、正面玄関を入るとすぐのところに「外国語対応アテンダント」カウンターがある。英語と中国語が話せる従業員が待機しており、希望があれば売り場へ無料でアテンドする。昨年10月に始めたサービスで「既にリピーターもいらゃっしゃる」(吉田佳代・お客さまサービスマネージャー)と好評だ。アテンドの時間は約20分から長い場合は4時間に及ぶこともあるという。

同店の4~6月の免税品売上額は対前年比で約70%も伸びた。免税品購入額ベースでみると、全体の約65%が中国人客だ。免税カウンターを増設し、10月には同時に8人の客と対応可能にする。免税案内のリーフレットも一新させる一方で、希望する従業員に向けた中国語のレッスンを10月までの開店前に実施する。

JR新宿駅南側の高島屋新宿店(渋谷区)では、4月の免税品売上額は全体の8%で昨年1年間の4・5%より高まっている。神田美樹雄・営業企画担当課長は「10月以降は10%になる可能性もある」と予想。1人当たりの購入額は約8万円で、以前と比べ2万円ほど減ったが、「お客様のすそ野が(富裕層から中間層へと)広がった」(神田氏)ととらえている。英語と中国語の通訳が常駐し、免税カウンターを10月には拡大し、同時に6人の客と対応できるようにする。

さらに10月1~7日には、厳選した化粧品と食料品を販売するコーナーを1階に特設する。日本製に限定し、外国人客には「時間のない方はぜひこちらでどうぞ」と呼びかけ、日本人客には「海外に誇れる日本製品を再認識していただく」(神田氏)という。

JR東京駅に直結する大丸東京店(千代田区)。4月の免税品売上額は対前年比90%増。台湾と中国からの客がほぼ半数を占めるが、欧米からの客も比較的多いという。駅周辺に外資系企業が多く、約8割が個人旅行者という特徴もある。

東京駅発着の外国人客が、たまたま立ち寄ることも多い。持参したスーツケースに土産が入りきらず、新品を購入する外国人客も目立つことから「カバン売り場のスペースを広く、スーツケースの品数を多くしており、好評いただいている」(綱島圭吾・営業推進部スタッフ)。10月からは、全館でフリーワイファイ対応を可能にするほか、3階にある免税カウンターを、東京駅発着電車や皇居の風景が楽しめる12階に移設・拡大する。

日本百貨店協会によると、7月の全国百貨店売上高は前年同月比2・5%減(既存店ベース)の5448億円で、4カ月連続で前年実績を下回った。日本人客の消費回復はまだのようだ。それだけに外国人観光客への期待は大きい。「外国からのお客様にストレスなく買い物をしていただきたい」と百貨店関係者は口をそろえる。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら