「米国」「フランス」から届く「福島原発」処理費用の巨額請求書に東電は対応できない
仏ドービルサミットでは国際協調のエールが交わされるが

 東京電力福島第一原子力発電所の1号機~4号機の現状が想像を絶する事態にあることを、前号に引き続きこれまで指摘されていない「事実」を紹介することで、説明したい。

 先ずは、1979年3月の米国ペンシルベニア州の州都ハリスバーグ郊外にあるスリーマイル島原子力発電所2号機事故との比較対照から行いたい。

「スリーマイル島原子力発電所」
①加圧水型(PWR)原発一機のみ損傷
②建屋は損傷しなかった:ユーティリティは使用可能
③迅速な炉心冷却ができた
④外部損傷、ガレキ無し
⑤サイトの放射線レベル低
⑥使用済み燃料棒貯蔵プールが空
⑦低燃焼度の二酸化ウラン燃料
⑧淡水による冷却と浄化
⑨燃料取り出しは原子炉と少量の冷却システム内のみ
⑩燃料取り出しはクリーンでかつアクセス可能
⑪原子炉キャビティへの冠水能力。

「福島第一原子力発電所」
①沸騰水型(BWR)原発が複数損傷
②広範囲にわたる建屋損傷:構造健全性に信頼無し,電気が限定的
③炉心冷却システム使用不能
④広範にわたるサイト損傷及びガレキ
⑤サイトの放射線レベル高
⑥使用済み燃料棒貯蔵プールおよび燃料棒が損傷:6900体の燃料集合体が含まれる
⑦低~高燃料度の二酸化ウラン、MOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料
⑧海水による冷却と浄化
⑨使用済み燃料棒貯蔵プールおよび全ての一次格納容器からの燃料取り出し
⑩燃料棒取り出しフロアにはガレキがあり、アクセス不能
⑪原子炉キャビティへの冠水能力限定的―――。

以上、スリーマイル島原発と福島第一原発の被災状況を比較すれば、悲惨な状況は一目瞭然である。

遅まきながら政府が4月13日、今回の福島第一原発事故を86年に旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故並みの最悪「レベル7」(国際原子力事象評価尺度)に引き上げたのは当然のことである。それほど福島第一原発の直面する事態は深刻であり、危険な状態にあるということだ。

福島第一原発で言えば、特に上述の④⑤⑥⑦⑨が問題である。この5つの問題点をクリアすることなしに、福島第一原発の「安全宣言」は永遠に出せない。

では、具体的に何をどうすればいいのか。


④のサイト損傷、およびがれきの状況から見てみよう。

 前号でも述べたように、例えば建屋の殆どが崩壊した3号機は、巨大な天井クレーンが使用済み核燃料棒の貯蔵プールの真上に落下し、直径80センチの耐震補強柱が何十本もがへし曲がり、直径1メートルもある支柱鉄骨が崩落して、事実上、ガレキ状態にある。このガレキ撤去に少なくとも半年は要する。放射線に汚染されたガレキ撤去のための遠隔操作自走巨大クレーンを米国から借り受け、分解・搬送しなければならないのだ。

完全封印、汚水処理の巨額費用

 次に、⑨の燃料棒貯蔵プールである。核燃料棒自体の損傷が確実なためサイト内はプルトニウムを含む放射性物質が大気中に飛散し、さらに格納容器周辺には高濃度放射線汚染水が大量に溜まっているのだ。そうした劣悪の状況下で汚染水除去に着手し、その後は使用済みを含めて核燃料棒を取り出し、地中深くコンクリートで密閉隔離しなければならない。

 これもまた我が国の技術・人材・資材・経験では対応できない。世界最大の原子力コングロマリットの仏アレバ社と米国のウェスティングハウス(WH)、原子力エンジニアリング会社バブコック&ウィルコックス(B&W)、原発建設会社大手ショーン・グループ、核燃料開発会社キュリオンなどの支援を仰がなければならない。

いずれも民間の営利企業である。5月末のフランス・ドービルG8サミット(主要8ヵ国首脳会議)開催前に世界各国から「国際協調」のエールは送られて来るはずだが、米仏両国企業から必ず請求書が届く。

菅首相は福島原発の終結のメドがたたない中、浜岡原発の停止を要請した 【PHOTO】Getty Images

 東京電力一社でガレキ撤去、汚染水除去、そして全ての原発関連機器の完全封印=廃炉費用を購えることができるのか。答えはノーである。約2兆円とされる原発賠償を抱える東電の有限責任の上限を一刻も早く決める必要がある。

だが、菅直人首相の肝いりで発足した「復興構想会議」の論議は百花繚乱、空中戦を繰り広げるばかりだ。
 

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