「女性活躍企業」の認定を創設
臨時国会に推進法案提出 登用の情報開示を義務付けも[女性活用]

加藤勝信内閣人事局長(左)と、働き方の改革などについて話す「霞が関で働く女性有志」のメンバー=東京都千代田区の内閣府で6月26日

安倍晋三政権が成長戦略の中核として「女性の活躍」推進に力を入れている。安倍首相は、秋の臨時国会の目玉として、企業や国、地方自治体に女性の登用を促す法案を提出することを表明。9月12~14日には東京都内で「女性版ダボス会議」といえる政府など主催の国際シンポジウムを開き、国際通貨基金(IMF)初の女性トップであるラガルド専務理事ら政治やビジネスなど各界で活躍する女性が集まり、女性が働くことによる経済効果などを議論する。

政府が女性活用を進める背景にあるのは、少子高齢化による労働力不足だ。女性を労働力として労働市場に引っ張り出すことが、日本経済の持続的成長には欠かせないというわけだ。首相は今年1月のダボス会議で、「いまだに活用されていない資源の最たるものが女性の力だから、日本は女性に輝く機会を与える場でなくてはならない。2020年までに指導的地位にいる人の3割を女性にする」と述べた。

女性の登用を促す法案は、この「3割」を実現するために、国と自治体、民間事業主に対し、採用や配置、昇進の現状把握と情報開示を義務づけることが柱だ。また、女性の社会進出を後押しするため、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)に沿った職場環境の改善を進める企業を「女性活躍企業」として認定する仕組みを創設。女性起業家への助成金などの支援措置を新たに設けるほか、国の公共事業の受注機会を優先して増やす制度も盛り込む方針だ。

一方で、政権の足元の中央省庁の現場は必ずしも女性にとって働きやすい環境とは言えない。霞が関では、従来の男性中心、残業を前提とした仕事、長時間労働を尊ぶ文化――などが根強く残っているためだ。

「霞が関的働き方」がネック

「霞が関的働き方」の象徴とも言えるのが、国会議員の質問に対する閣僚答弁の作成だ。多くの場合、国会議員から質問内容が通告されるのは、質問前日の夕方。午後6時ごろに通告を受けた後、各省庁は電話などで質問内容を確認。整理したうえで担当者を割り振るのが午後9時ごろだ。そこから答弁案の作成が始まる。関係部局での協議を経て、各省内での了解を取り、場合によっては首相官邸とも調整し、答弁内容ができあがるのが午前0時。そこから添付資料を作成し、印刷して完成するのはようやく午前3時半だ。担当者はいったん退庁するが、すぐに登庁して午前7時の閣僚へのレクチャーに備えなくてはいけない。

このような現状に対し、霞が関の女性官僚の有志グループは各省庁の入省10~20年目のキャリア女性123人に調査を実施。それによると、子どものいる女性職員の回答者すべてが仕事と家庭の両立について困難や不安を感じたことがあると回答した。その理由の9割を占めるのが「勤務時間外に対応せざるを得ないため」で、内訳のトップが「国会質疑対応」だった。

各省庁はこれまで、子育て中の女性職員には、残業の少ないポストへの配置や、周囲の職員による仕事の肩代わりなどの「配慮」で対処してきた。だが、国家公務員1種・総合職採用者(事務職)に占める女性の割合は、1990年は7%だったが、08年に30%を超えた。今後さらに女性が増えることを考えると、「配慮」での対応には限界が来ている。

「女性にとって働きやすい環境を作り、活動の場を充実させることは焦眉の課題だ」。首相は13年9月の国連総会でこう演説。霞が関についても、働き方改革に乗り出した。内閣人事局は今年6月、全省庁の事務次官級で作る「女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議会」を設置。各省庁の課題や取り組みを把握する調査を行い、秋にも具体的な改善指針をまとめる方針だ。

重要性が認識されはじめたものの、課題も多い。政府は今年6月、「テレワークなど職員の状況に応じた柔軟な働き方を推進する」との方針を閣議決定した。首相は第1次政権時にもテレワークに「号令」をかけている。06年9月、所信表明演説で「テレワークの人口の倍増を目指す」と打ち出した。しかし足元の霞が関での普及はなかなか進まなかった。書面や対面での意思疎通を重んじる労務慣行や、情報漏洩の懸念からだ。

その後、女性職員の増加でテレワークの必要性が再認識され、本格的に導入する省庁も出てきた。財務省は昨年9月、暗証番号などによる厳しい情報管理の下、自宅のパソコンなどに庁内パソコンの画面を呼び出すシステムを導入。文部科学省では育児や介護を両立する職員に限り、8月からこれまで「1日単位」でしか認められず使い勝手が悪かったテレワークを、出勤と組み合わせられる勤務パターンを導入した。

ただ現状では、どの省庁でも子育て世代が望む「早めに退庁して、数時間後に子どもが寝たらテレワーク」という勤務形態は取れない。人事院規則は1日7時間45分の勤務時間に原則60分の休憩時間を置くよう定めており、勤務時間はその休憩でしか分割できないからだ。人事院規則は勤務時間の分割を直接禁じるものではないが、弾力的な運用を実現するためには「技術的な法制上の対応も必要だが、まずは各省の業務運営上可能か、勤務時間管理、服務管理のうえで適当かなどを総合的に検討することが必要になる」(人事院)。

制度より慣習がネックになっているケースも多い。女性が働くうえで大きな壁となるのが、子育ての負担が集中する時期と職場でのキャリアに重要な時期が重なることだ。霞が関では30代後半が重要な転機となる。各課で「総括」と呼ばれる筆頭課長補佐は、幹部候補として足場を築くためには重要なポストだ。ただ徹夜も当然の役職だけに、育児休業から復帰した女性職員が「両立は無理」と辞退して、希望するキャリアを断念することもある。内閣人事局幹部は「総括を経験しなくても活躍できるし、子育て後に同期に遅れても経験できる道筋を示したい」と話すが、民間企業以上に入省年次による横並び意識が強い霞が関で、柔軟なキャリア・パスを示せるかは未知数だ。

女性の活躍を実現するためには、男女を問わず、仕事と家庭を両立できる職場環境が不可欠だ。政権が掲げる「女性の活躍」推進の成否は、まず足元の「霞が関的価値観」をどれだけ変えられるかにかかっている。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら