真壁昭夫「通貨とファイナンスで読む世界経済」

「年末には108円台」の声も出る円安傾向は、歓迎すべきことなのか

2014年09月10日(水) 真壁 昭夫
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9月5日には105円台(写真)、さらに9日には106円台に乗せた   photo Getty Images

足許の為替市場で、一時、1ドル=106円台に乗せるなど円安・ドル高の傾向が鮮明になっている。この背景には、景気回復に伴い、米国のFRB(連邦準備理事会)が金融政策を引き締め型に転換することが現実味を帯びてきたことがある。

FRBが政策金利を引き上げると、日米の金利差が拡大することになる。金利差が拡大すると、金利の低い通貨から高い通貨へと投資資金が移動することが想定され、ドル高・円安の傾向が強まる可能性が高い。

市場関係者の間では、年末までには1ドル=108円台まで円安が進む可能性があるとの見方も出ている。円安傾向が鮮明化することは、自動車などわが国の主力輸出企業には重要な追い風になるものの、輸入企業にはマイナスの影響を与えることになる。

経済に重要な影響を与える為替の変動

現在のように世界の主要国の間で自由に貿易が行われ、投資資金の流れにもほとんど制約がない状況になると、為替が持つ意味は極めて重要だ。為替の変化によって、輸出や輸入の流れやマネーフロー、さらには当該国の経済構造にまで大きく影響が及ぶ可能性がある。

2011年秋まで1ドル=75円台の超円高の時期が続いた。当時、急激な円高傾向が進んだことで、わが国の半導体や家電製品などのメーカーは、一時期、大幅な赤字に置き込まれる事態になった。

超円高の状況下、わが国の製造業は競争力を維持するため、為替リスクが低く、安価な労働力が豊富な海外に生産拠点を移転する動きを活発化した。企業としてみれば、超円高の中で生き残りを図るためには、海外に出ていく以外に有効な手段が見つからなかった。

円安には功罪の両面

円安の影響を単純に考えると、円安が進むと輸出にはプラス要因、輸入にはマイナスの要因として働く。また一般的に、株式市場に上場されている企業は輸出割合が高いこともあり、円安になると、株価が上昇する傾向が認められる。

一方、エネルギーや食糧品などの輸入企業にとって、円安になると収益が圧迫されることになる。エネルギー資源や食糧品などは、価格が上昇しても輸入を減らすことが難しいこともあり、為替変動の影響をまともに受ける可能性が高い。

さらに円の価値が減価することは、わが国の人々が持っている円資産の価値が下落することだ。それは好ましいことではない。為替は、本来、当該国の経済の実力を反映して決まり、安定していることが望ましい。政策当局はその基本を忘れてはならない。


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