官々愕々 地方創生は地方衰退への道?
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9月3日の内閣改造で、地方創生担当大臣に石破茂・前自民党幹事長が就任した。

来年4月の統一地方選に向けて、地方再生は安倍政権最大の課題だ。自民党は地方に強いと一般には信じられている。しかし、地方での自民党支持は必ずしも磐石とは言えない。

安倍政権の支持率が高いのは、何と言ってもアベノミクスへの高い期待ゆえだ。第一の矢の大胆な金融緩和で円安を実現し、輸出企業の利益を拡大して株価を上げた。これによって、都市部や大企業中心にボーナス増加などで所得も増え始め、景気がよくなるのではという期待が膨らんだ。

しかし、ここへ来て、物価の上昇が庶民の家計を直撃し、消費不振で景気が腰折れするのではないかという懸念が出てきた。頼みの綱が第三の矢、成長戦略なのだが、フィナンシャルタイムズ紙は、アベノミクスの三本の矢は見せかけだけで、第一の矢しかなかったと断じ、今後は第四の矢が「軍国主義の復活」にならないように願うと揶揄した。有力海外メディアも愛想を尽かすほどだから、国民が疑い始めても全く不思議ではない。

とりわけ、今回は、地方においてその懸念が大である。

普通の感覚では、東京の方が全国平均よりも物価上昇率が高いという気がする。しかし、最近は、東京よりも全国の上昇率の方が0・5%以上も高い。その原因は、ガソリンと灯油の購入額だ。この二つの消費支出に占める割合で見ると、全国平均が東京の3倍になっている。円安によって、ガソリンや灯油の価格は前年同月比で10%程度上がっているが、地方では、その影響が全国平均の3倍。冬になればさらに拡大する。

地方の賃金上昇は都市部より小さい上にガソリン・灯油の値上げがさらに追い打ちをかける。まさに踏んだりけったりの状況だ。安倍政権の支持率が下がっても不思議ではない。

さらに、7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定は、実は、地方で評判が悪かった。全国紙と違い、地方紙はほとんどが集団的自衛権行使容認に反対だった。このままでは、地方で自民党支持率が大きく下がる怖れがある。そこで打ち出されたのが「地方創生」なのだが、今のところはっきり言って何の知恵も見られない。予算要求では、結局は公共事業のバラマキと申し訳程度の中小企業予算だけだ。

しかし、今、公共事業を拡大しても意味がない。何故なら、公共事業のバラマキはすでに2年目に入り、労働力の需要が供給能力を上回っている。これ以上増やしたところで、単価が上がるばかりで実際に工事量が増えるのはわずかだ。工事量が増えたとしても、それは、単価アップで採算が取れなくなった民間の工事がその分減っているということに過ぎない。

しかも、公共事業で橋や道路やハコモノを大量に作ると、将来その維持修繕などに莫大な費用が必要となり、地方財政破綻の原因になる。また、本来は、農業や自然エネルギー、観光など魅力ある職場を作るべきなのに、公共事業中毒になった地域ほど、自治体がそのための知恵を出せなくなる。

公共事業は数年単位のプロジェクトだ。働く人はそれを転々と移り歩く。魅力的な職場とは言えない。その結果、若者が都市に流出して地方の高齢化が進み、最終的には消滅への道が待っている。

つまり、今回も「地方創生」という名の下に確実に地方衰退の政策が実施される。もちろん、各省庁にとっては、利権拡大の絶好の機会だ。いつものようにバラマキ予算の「表紙」を替えて「新規要求」をする彼らの得意技がいたるところで見られることだろう。

『週刊現代』2014年9月20・27日号より

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