凍土壁失敗の元凶は経産省にある
『古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン』 vol.102より

事故直後、遮水壁は東電が拒否

――では、次に福島原発での、汚染水コントロール策の失敗についてお願いします。

古賀: 数日前に出てましたけども、福島原発の汚染水ですね。これをなんとかしなくちゃいけない。もちろんそのうえで廃炉につなげなきゃいけないんですけれども、「凍土壁」というもので原子炉建屋の周りを囲って、地下水が中に入ってこないようにしようとしたうえで、その汚い水を抜いて、次の処理に入ろうということをやっていたんですね。

凍土壁というのは、文字どおり、土を凍らせる、冷却する装置を深く埋め込んで、ずうっと周りを埋め込んで、土を固めるという方法なんですけれども小さい規模ではもともとね、普通の建設工事で使われたことはあった。実績はあったんですけれども、これだけ大規模なものっていうのは、できないんじゃないか、あるいは長期間にわたってというのは難しいんじゃないかとか、いろいろ批判があったにもかかわらず、これ、強行してたんです。

トレンチって言うんですかね、配管が土の中に、原子炉建屋とのあいだを張り巡らされてあってですね。その配管の中に汚染水の高濃度の汚染水がですね、溜まっているので、それを抜くために、まずちょっと海側のトレンチ沿いにですね、壁をつくるというのをやってたんですが、これがなかなか凍らないと。

凍らないって、全然、凍らないわけじゃない。かなりの部分は凍っているんですけど、どうしても隙間ができちゃうということで、なんとこの暑いさなかにですね、氷とドライアイスをですね、その隙間にどんどん注ぎ込んで、なんとかして凍らせようという、笑い話みたいなことをやったんですね。

ところが、もうそれがどうやっても、やっぱり固まらないと。結局、原子力規制委員会に対して、東電がですね、やり方をちょっと変えますと。ちょっとあきらめてですね、固まってないところはもうコンクリートでやりますと。コンクリートとか、間詰めと言ってました。あいだを詰めるね、間詰め材を入れると言ってましたけど、ある意味、従来型のやり方ですね。それの組み合わせでやりますというような報告をして、承認を求めたんですけど、規制委員会は、「え! ちょっと待てよ。大丈夫か」ということで、すぐに承認とはならずに、今、宙ぶらりんになっていると、こういうことなんです。

遮水壁の設計を先送りした海江田万里経産相(当時)---〔PHOTO〕gettyimages

事故が起きた直後から、遮水壁をつくれという話はあったんです。これは当時、民主党の菅内閣で、経産大臣は海江田万里さん、総理補佐官で馬淵澄夫さんという人がいたんですね、国交大臣になった人ですけど。彼がそういうことを提言して、東電にやれと、設計に入れと指示したんです。

けれども、結局、東電はですね、お金がかかりすぎると。なんか1000億を超えるんじゃないかという、当時の試算があって。そうすると東電が破綻するんじゃないかっていう心配をして、やめてもいいですねって海江田さんに承認を求めて、承認したんですね、海江田さんが。

その後、ほったらかしになって、経産省はとにかくもう再稼動だけですから、事故なんかどうでもよくて、再稼動のことばっかり一所懸命やってて、13年ぐらいになってですね、安倍政権になってからまた大騒ぎになった。

そのときに、最終的に凍土壁に決めちゃうわけですが、なんで凍土璧になったかというと、ちょっと安いという試算ができるわけです。鉄とか、セメントで完全に固めるよりは、ちょっと安いですよと。安いから、それだけ東電に負担が少なくて、破綻を避けられるというですね、その理由が1つなんです。

「凍土壁」が採用されたとんでもない理由

古賀: 実はですね、もう1つ、非常に重要な理由がありまして、それは何かっていうと、「できるかどうかわからない」「難しい」というのがですね、実は選択するときの大きな条件になったんですよ。

そんなのおかしいんじゃないのと。逆じゃないんですかと。確実にできるっていうのが条件でしょというふうに思う人が多いと思うんです。では、なんで、「できないかもしれない」という必要があるかっていうと、凍土壁はできるかどうかわかんないよね。こんなこと、やったことないよ。

でも、それを政府がもしやれと言うんだったら、東電としては、「ちょっとリスクがあるのに、それを自分だけで被って、やるんですか?」 となります。で、「じゃあ東電がかわいそうだから、政府がやってあげましょう」という、そういう理屈になるんですね。

これは研究開発という名目を付けてですね、民間企業だけではとてもできない、将来、いろいろ使えるかもしれない、役に立つ技術だから、国がお金を出して、研究開発にしましょうという理屈ですね、その凍土壁をつくるのを、国の税金でやるということにしたいという思惑がありまして。したがって、できるかどうかわかんないということが、むしろ非常に大事なメリットであると。

しかも当時もやっぱり再稼動のために一所懸命、経産省はもう、何ていうかな、全力を挙げて、やってるので、そんなこと、真面目に検討する人がいないわけですよ。で、若い官僚が、どうしよう、どうしようなんて、全然、専門家でもないですよ。その彼が1ヵ月、2ヵ月ね、いろいろ比べて、取りあえずこれだったら国の税金を入れられるなというので、案をつくっちゃって。それで乗っかっちゃったんですね。

首相の汚染水コントロール発言で後戻りできず「談合状態」

IOC総会で招致アピールをする安倍首相---〔PHOTO〕gettyimages

古賀: ところがですね、決めたのはいいけども、みんな、反対するわけですよ。こんな凍土壁、おかしいじゃねえか。で、ワァワァワァワァ言ってたんだけど、最後、結局、決め手になったのが、あの安倍さんのですね、オリンピックの招致のときの、汚染水コントロール発言ですね。

福島の状況はアンダーコントロールですと。福島の原発沖のですね、小さいエリアに全部、完全にブロックしておりますと。外に影響は出ておりませんというですね、もうとんでもない大嘘をついてですね、オリンピックを招致したんです。

あれを言わせたのも経産省なんですけども、それを言ったことによって、これはもう国際公約であると。何が何でもやらなくちゃいけない、もう国の約束になったのでと言って、あのときから、もう汚染水問題というのは、国が全部、前面に出るとよく言いましたね。

国が前面に出るって何かというと、もちろん別に茂木経産大臣が、あそこで作業するというわけじゃなくてですね、要は税金を使うというだけの話です。そこで、もうこれは完全に税金でやりますということに決まったんですね。

もう国際公約で大事なことだから、国の税金でやるというふうに決まっちゃったあとはですね、実は研究開発要素というのは、もうなくても良くなるわけですね。理由として必要なくなる。ということは、凍土壁にこだわらなくても良かったんです、その時点以降は。

ところがですね、それまで経産省はずうっと鹿島建設と一緒に話をいろいろしてきまして、鹿島にいろんなことをやらせてたんですね。それは鹿島としてみれば、ゆくゆくそれをね、事業として、何百億の事業を取れれば、すごく儲かるから、先行投資という意味で、いろんな作業を、お付き合いして、経産省にいろんなデータも出したし、協力しましたと。

それで、さあ、決めようというときになって、「ああ、やめました。これ、コンクリートと鉄にします」って言ってですね、一般入札をやられると、これはもうみんな、コスト叩き合いになって、儲かる事業じゃなくなるし、自分が取れるかどうかもわかんなくなる。

経産省から見ると、今までちょっとせっかくね、鹿島とやってたのに、それをほかの会社にやらせるというのもね、なんだなぁと。で、もちろん彼らの頭の中には、これで鹿島に天下りポストが増えるなとかね、そういう計算もあるので、どうしても鹿島にしたいということでですね、いろいろ批判があったんだけど、ちょうど秋の臨時国会が始まると、いろいろ言われるので、慌てて臨時国会の前に、2週間ぐらいだったかな? 短い入札期間で、いきなりボーンと公募して、「やる人?」って言った。

そんなのもう、新しいことだし、鹿島はずっとやってたけど、ほかのところは別に準備してませんから、海外の会社も入ってこなくて、鹿島が落札すると。これ、正確に言うと東電と鹿島の共同事業ということになっているんですけども、そこで決めちゃったんですよ。契約しちゃったと。それで、今、ずうっと、何百億も予算をかけてやってきたんですけども、ところが、もうグチャグチャになってきたんですね。氷とか、ドライアイスを入れたり、今度はコンクリートを入れるとかね、もうなんか泥んこ遊びみたいになってきた。

――笑うしかない。ひどいですよね。

汚染水対策は即刻、ゼロから議論し直せ

古賀: それでもう官僚のね、泥んこ遊びに、もうこれ全部、税金ですからね、付き合わされるというような状況に、今、なっていると。これはね、もうはっきり言って、あきらめたほうがいいと思いますね。今のやり方、凍土壁はやめる。

それから、もともと汚染水がどんどんどんどん溜まるというのでですね、もうちょっとこれ、限界に来てるんですよ。

実は福島原発の事故直後というのは、もちろんものすごいエネルギーを持っていて、非常に熱いんですけれども、今はもうだいぶ冷えてきていてですね。当初に比べると、冷やすために必要なエネルギーというのは、非常に小さくていいんです。もう桁違いに小さくなっているんですよ。

そうすると、もう計算上は水をじゃんじゃん入れなくても、空冷式で十分収められるというレベルに来てるんです。チェルノブイリとか、みんな、最後は空冷式ですから。なので、そっちに切り替えるという提案は、もう既に出ているんですね。

元GEの技術者だった、コンサルタントの佐藤暁さんという方がいらっしゃいますけど、この方は私が一番信用してる原子力の専門家なんですけども、彼なんかはもう具体的な提案をつくってですね、いろんなとこに出して、茂木経産大臣なんかも全部、それを知ってるんですね。

でも、なんか今までやってきたのを変えるっていうことに、官僚というのは、いつも抵抗するんですけど。それはなんでかっていうとですね、新しいことやると、めんどくさいですよ。いろんな議論をまた呼ぶし。

でも、今の仕組みというのはですね、非常に経産省にとっては都合が良くてですね。とにかく巨大な予算をこれから使えるわけですね、永遠に。まあ、何十年もですね、廃炉が終わるまで予算を出せる。

それは結果がいいか、悪いかって、あんまり関係ないんですよ、彼らにとっては。とにかく予算を持ってですね、こういう工事をやります。ああいう工事をやります。こういう作業をやりますっていうのがあれば、それを、じゃあ、どこの会社にしましょうかとかね。入札の仕方をどうしましょうかというので、全部、それを官僚の裁量で決めていける。

そうするとですね、非常にそこに利権が生まれるわけですね。で、業界から、いろいろああしてくれ、こうしてくれと言われるのを、「ウーン。やってあげましょうかね。どうしましょうかねぇ~」なんてやりながら、天下り先をどんどん拡大できるというですね、新しい何ていうか、公共事業がですね、生まれたという感じに、今、なっちゃっています。

なんか、せっかくそうやって動き出してるのに、「あんまり難しいことはやりたくねえな」と、こういうふうに経産省はなっちゃう。ちょっと国民から見ると、もう何百億どころか、何千億というお金がこれからですね、意味のない作業に投入されるかもしれないということになるので、いったんあきらめてですね、もう一回、ちょっと空冷式を含めて、抜本的にですね、変えていくと。やり方を変えるという議論をしたほうがいいなというふうに思いますね。・・・・・・(以下略)

『古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン』vol102
(2014年9月8日配信)より