大企業の中堅社員へ「組織に属しながら新たな価値を創出する"サラリーマンイノベータ―"になれ!」柳内啓司(TBS)
柳内啓司氏

「シリアルイノベーター」という言葉を耳にしたことがあるだろうか。イノベーターという言葉を聞くと多くの人はシリコンバレーの起業家のような人物を想像するかもしれない。だが、シリアルイノベーターは、『シリアル・イノベーター 「非シリコンバレー型」イノベーションの流儀』(プレジデント社)の中で「大企業の中で中堅にありながら、イノベーションを創出する人材」だと表現される。

大企業においてイノベーションは応援されるよりも、むしろ阻害されることが多い。そんな大企業の中でイノベーションを起こそうとする人材がなぜ注目されるのか。

それは様々な環境の変化が速まり、ビジネスモデルの寿命がどんどん短くなってきているからだろう。これまでの数十年間、利益を上げることができていたビジネスモデルが、これから先10年ほどで利益の上がらないものになってしまう、そんな時代が到来している。

大企業の中でイノベーションを起こし、新たなビジネスモデル、新たな商品を生み出さなければ、数多くの人が働く大企業がいずれ立ち行かなくなってしまうかもしれない。そうなれば、多くの人生に負の影響を与えてしまうことになるだろう。

そんな未来にならないよう、大企業も変わっていく必要がある。その担い手が「シリアルイノベーター」だ。では、彼らに必要な要素はどのようなものなのだろう。それは、高いビジョンに、優れたビジネススキル、技術への深い理解、社内政治力などだ。非常に高いスキルでははるが、これらが揃うことで大企業の中でブレークスルーを起こすことが可能になる。

今回、「新宿360°大学」にゲストとして登壇したTBSの柳内啓司氏は、まさしく大企業においてブレークスルーを起こそうとしている人物だ。今回は、会社内におけるイノベーター人材のことを「サラリーマンイノベーター」と表現し、彼の経験と考えを発表したプレゼンテーションの内容を紹介する。

「新宿360°大学」

サラリーマンイノベーターのススメ

今回は「サラリーマンイノベーター式仕事術」というテーマでお話させてもらいます。イノベーターというと組織から独立して新しいことを推進する人々という印象を持っているかもしれません。しかし、未来に企業が生き残っていくためには、会社内におけるイノベーター人材「サラリーマンイノベーター」が必要です。

サラリーマンイノベーターとは、「組織に属しながら新たな成長産業、市場への参入を果敢に推進できるビジネスマン」のこと。「サラリーマンでそんな働き方ができるの?」と疑問を抱く方もいるかもしれませんが、今日はそうなるためのヒントを紹介していければと思います。

多くの大企業にはイノベーションのジレンマが存在します。多くの大企業が安定的なビジネスモデルを抱えているため、新興市場に参入する必要がありません。むしろ、新しいビジネスを始めるとそれが既存のビジネスモデルを崩してしまう恐れがあるのです。

現代はヒト、モノ、カネ、情報の流動性がどんどん高まり、ビジネスモデルの寿命が次第に短くなってきています。かつては同じビジネスモデルで30年ほどはお金を稼ぐことができていましたが、今では10年ほどで次の新しいビジネスを生み出す必要が出てきています。

こうした時代背景の中では、企業もそこに所属する人間も、新たな商品の開発、イノベーティブなものを生み出すことに取り組まないといけません。そのためにはルーティン・ワークを越えて、新しいことを仕掛ける人材が組織にも必要なのです。

サラリーマンイノベーターに必要な力

では、こうした人材になるためにはどういった力が必要なのか。私は「新しい情報にアンテナを張る力」「外部のリソースを調達する力」「社内調整をする能力」の3つが必要だと思っています。

サラリーマンイノベーターになるために必要なこれらの力を身に付けるために私が実践してきた仕事術をいくつか紹介していきます。

・社内外に情報を発信する

私は入社して数年経った頃、社内外の人間に向けて、海外メディアの取り組みや、IT系の友人から教えてもらった最新のトレンドなど、自分のやりたいことにつながる情報を発信していました。

社内においては情報を受け取った相手にとっては情報を得るメリットがあり、発信した自分にとっては「面白い情報を知っている人間」というキャラ付けが可能になります。社外でもSNS等を通じて情報を発信していくことで、様々な人に会うことができますし、相談を持ちかけられて仕事になることもあります。

情報を発信していると自分のところに有益な情報が集まってきます。私は情報発信の結果、システムの開発をすることになったり、企画が実現したり、と業務につながることがありました。

・まず始めて、実績を作る

次に有効な手段として業務外でひとまず始めてみる、というものが挙げられます。まだお金も産まないし、会社は業務として認めてくれないことであっても、業務外でとりあえず始めてしまって実績を作り、事例にしてしまうのも選択肢のひとつです。

私が担当している番組も、最初は「デジタルで番組を盛り上げよう会議」という、デジタルでの番組制作やプロモーションをしたいと考えている有志が集まっていた勉強会から始まって事例になり、業務として認められました。

・師匠を見つけ、弟子入りする

社内のヒト・モノ・カネを活用できるのがサラリーマンの利点です。これを実現するためには社内調整力が非常に重要になります。社内調整力を磨くための方法、社内で信頼を勝ち取る方法の1つ目は「弟子入り」です。

弟子入りとは、師匠を見つけ、その人にくっついていることです。ネットや書籍でもそれなりに業界の知識を得ることはできますが、貴重な情報は面白い師匠の下にいることで獲得できると考えています。私が所属しているテレビ業界は文書化されていないノウハウが多いため、特に弟子入りが重要になります。

自分が未熟なうちは、師匠から命令されたことをとにかく実行します。これを繰り返すことで自分の型を作り、基礎力を高めていきます。弟子入りのポイントは「ノーは言わない」こと。自分の主義主張と違っていても師匠の言うことに従うことです。そのため、師匠選びは慎重に行いましょう。

一度弟子入りした師匠は、いざというとき弟子の力になってくれます。社内で新しいことをするときにも、師匠は協力してくれるはずです。

・雑用を積極的にやる

次にオススメするのが雑用を進んで引き受けること。これは特に若いうちにオススメです。私自身、今でも雑用をやることがあります。ただし、単に雑用するだけでは終わらせません。これにより成長と信頼を手に入れましょう。たとえば、発言をメモする議事録担当を進んで引受け、そこで得たネタを使って質問して雑談に持ち込み、社内人脈を作る。Excelに打ち込む単純作業を指示された際、マクロを作ってシステム化することで、ITスキルがあることをアピールする。雑用をただでは終わらせず、次につなげていきます。

・掛け算で社内の希少リソースになる

次に、社内の貴重な人材となること。それには掛け算で自分の強みを作ることをオススメします。私の場合は、テレビ業界でインターネットに詳しい人間は少なかったため、会社で重宝されるようになりました。

たとえば、不動産業界であれば「飲食」に精通する、エンジニアであれば高いコミュニケーションと掛けあわせるなど、自分が属している業界には少ない人材となるための努力と発信を行い、「◯◯といえば自分」となるようにアピールしていきましょう。

今回の新宿360°大学に集まったメンバーたち
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