野球
二宮清純「カープ奇跡のV、北別府学の86年」

後半戦だけで11勝

 9月4日現在、広島は首位・巨人に4ゲーム差の3位です。2日からの巨人との首位攻防戦3連敗で一気にゲーム差は開きました。

 ところで巨人と広島が最後までしのぎを削ったペナントレースと言えば1986年が思い出されます。広島は残り7試合で首位・巨人とは2.5ゲーム差の2位。自力で引っくり返すにはもう、ひとつも負けられない状況でした。

 奇跡の逆転優勝の立役者は18勝4敗、防御率2.43という素晴らしい成績でMVP、沢村賞、最多勝などに輝いたエースの北別府学さんでした。北別府さんは後半戦だけで11勝(1敗)をあげました。

「実は前半、7勝しかできなかった。オールスターにも選ばれず、期間中は鹿児島の実家に里帰りしたんです。そこで気分転換をはかれたのがよかったのかもしれません」
 28年前を、北別府さんは、そのように振り返りました。

 勝負の9、10月、広島は21勝8敗と圧倒的な強さを発揮します。驚異的な追い上げの秘密はどこにあったのでしょう。

 再び北別府さん。「残り15ゲーム、10ゲーム……。巨人は負けない。こっちも負けない。もう1敗もできないという状況がずっと続いていたので、不思議とプレッシャーはありませんでした。連勝ストッパーにだけはなりたくない。そんな思いでマウンドに上がったものです」

 後半戦の北別府さんのピッチングは神がかっていました。「北別府が投げると負けない」という“不敗神話”も生まれました。北別府さん本人はどうだったのでしょう。