磯崎哲也さん【後編】 「なぜベンチャー世界には『じじいっぽい人』がいないのか?」
『起業のエクイティ・ファイナンス』著者に聞く
[左]『起業のエクイティ・ファイナンス』著者の磯崎哲也さん、[右]藤野英人さん
藤野英人氏による新刊著者インタビュー、磯崎哲也氏『起業のエクイティ・ファイナンス』篇の後編では本の中でも語られている「ベンチャーの生態系」について紐解きます。ベンチャーはタイムマシン経営しやすい? 日本人は農耕民族だからM&Aは向いていないなんてウソ? なぜベンチャー界には「じじい」がいないのか? ベンチャーのわくわくする世界を垣間見ることができます。<構成・田中裕子>

【前編】はこちらをご覧ください。

不惑を目の前にして考えた、「いちばん"心が惑わない"もの」

藤野 そもそも、磯崎さんはいつからベンチャーとの関わりが始まったのですか? キャリアの前半、20代のころからベンチャーを意識されていたのでしょうか。

磯崎 いえ、もともとは長銀総合研究所に勤めていたので、初めからベンチャーに関わっていたわけではありません。転機は90年代後半のネットの盛り上がりですね。

ちょうど株式売買委託手数料の自由化も控えているときで、オンライン証券を立ち上げたら面白いんじゃないのか、という話になったんです。扱う金額も大きいから早くブレークイーブン(損益分岐点)に達するのではないか、と。そうした背景で、現在のカブドットコム証券の創業メンバーと一緒に動いたのが、初めてのベンチャー経験ですね。

藤野 ベンチャーというものに触れて、どう思われましたか?

磯崎 なんて面白い世界があるんだ! と驚きました。失敗するかもしれないという怖さもあるけれど、とにかく毎日がキラキラしていて。面白くてたまりませんでしたね。その後、現在のネットイヤーグループの設立に参加したのですが、ネットイヤーの最初のビジネスモデルはインキュベーターだったんです。ファンドをつくってベンチャーに投資をして育てて・・・とするなかで、投資する側も経験することができました。

藤野 魅惑的なベンチャーの世界にどんどん足を踏み込んでいったわけですね。

磯崎 そうですね(笑)。そしてITバブルが弾けた39歳のころ、不惑を目前にして「自分は何をしているときが一番"惑わない"だろう?」と考えて。出した答えは、「ベンチャー立ち上げのサポートをしているとき」でした。そこで独立して、ベンチャーにアドバイスをする立場になったわけです。

起業のエクイティ・ファイナンス』
著者= 磯崎哲也
ダイヤモンド社 / 定価3,888円(税込み)

◎内容紹介◎

2010年に発売されるや、ベンチャー関係者のバイブルとなった『起業のファイナンス』に待望の続編が登場! 現在、加速度的に増加しているベンチャーへの増資やM&Aに対応するために、本作ではより専門的なエクイティ・ファイナンス(株式を使った資金調達)の知識と実務手続きを解説。まさに今、ベンチャーや起業家が必要とする知識が網羅された、決定版ともいえる内容です!

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藤野 2012年にはご自身でフェムト・スタートアップを立ち上げられましたが、なぜ自らファンドを設立することにしたんですか?

磯崎 独立して、お金のないスタートアップから少しのアドバイスフィーをいただきつつ他の仕事で稼ぐ、という消耗戦を繰り広げていて(笑)。あるとき「お金の無いベンチャーからお金をもらうより、逆にベンチャーに資金提供をしてサポートは無料でする。そして、その成長とともにキャピタルゲインをもらうのが一番素直なんじゃないか」と気づいたんです。

2013年には新生企業投資株式会社と総額16億円のファンド、フェムトグロースキャピタルも立ち上げました。

藤野 キャリアの中で投資する側と投資を受ける側、両方を経験されたわけですよね。その違いについてはどのように感じていますか?

磯崎うーん・・・。ベンチャーと投資家の「立場の違い」については、そういえば今まであまり考えたことがなかったですね。カブドットコム証券やネットイヤーの立ち上げ期と同じように、今も起業家と一緒に投資家を回ったりしていますから。その頃から変わらずにやっていることは、「このビジネスにはこういう意味があって、マーケットのここを押さえられる。だからすごいんだ」と、ベンチャーの目線から伝えることです。

藤野 なるほど。

磯崎 米国には、ジョン・ドーアやマイケル・モリッツといったすごいベンチャーキャピタリストがたくさんいますが、私は「そうした偉大な先人にあこがれてベンチャーキャピタリストになりました」というよりも、「イケてるベンチャーの成長をサポートするのに一番いい形態は何か?」と自己流で模索していたら、「あ、やっぱりベンチャーキャピタルというのは、ベンチャーをサポートするのに非常に理にかなった方法なんだな」と、一昨年くらいに遅ればせながら気付いたという次第でして(笑)。

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