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気づかぬうちに、あなたも中国のスパイにされているかもしれない!  公安警察「ソトニ」と中国産業スパイの熾烈な戦い(後篇)
竹内明(TBS『Nスタ』キャスター)
FBIは米留学生が上海でスパイにリクルートされた事件を映画化してHP上で公開している

前篇では、いつのまにか日本人ビジネスマンが中国の産業スパイにされている手口をご紹介した。だが、実は、外交官やビジネスマンよりも、もっと大きな危険に晒されているのが就職前の学生だ。

中国諜報機関は学生時代に獲得工作を行い、就職させることによって対象国の組織、企業に浸透していく。このためFBI防諜本部は、この春、中国に留学する学生向けに、スパイによるリクルートに注意するよう呼びかける短編映画を作製した。

FBIの対中防諜戦略

映画の主人公の名は、上海に留学中の学生グレン・シュライバー。実在の人物だ。きっかけは国際関係に関する論文募集の広告だった。

遊ぶ金欲しさに120ドルの報酬で、このバイトに手を出す。担当はアマンダと言う中国人の女。数回の面談で金を受け取り、高級ホテルで上司を紹介される。アマンダは中国政府の人間だったのだ。

「米中は本当のパートナーになることが運命付けられている。世界に平和と繁栄をもたらそう。あなたのような将来のある有能な学生を支援したい。これは奨学金のようなものだ」

受け取った封筒には2500ドルが入っている。グレンは求められるがまま、国務省の試験を受けるが失敗。次はCIAの試験を受けろと指示され、4万ドルを受け取ってしまう。

CIA本部での面接で、ポリグラフテストを受けるグレンは嘘をつき続ける。

「外国政府からここに来るよう依頼されたことは?」「中国政府の人間と会ったことは?」「中国政府から金を受け取ったことは?」。

グレンはパニックになる。試験を途中で放棄して、上海に逃げ帰ろうとするが、出発直前の航空機内でグレンはFBIに身柄を拘束される。すでに、米当局の監視下に置かれていたのである。

FBI捜査官はグレンに言う。

「君は沢山あるチェスの駒のひとつに過ぎなかったんだ」

ビデオの最後に、本物のグレンが登場。「勧誘は今も行なわれている。若者が狙われている。ヤツらはカネで釣ろうとする」と呼びかける。

この映画に登場するアマンダは、国家安全部の機関員だったとされる。彼女のような機関員は、中国にルーツを持つものに対しては愛国心を掻き立てるが、外国人には現金や女などの弱みを握って恫喝する手法を取る。個人的友情、両国の友好という辻褄あわせで、心理的な逃げ道を作ってやることも忘れない。

ちなみに、哀れなグレンは国家の安全保障に関する情報を中国に流すことを計画した罪に問われ、裁判で禁固4年の実刑を言い渡されている。

FBIは服役中の人物までビデオに登場させて、中国情報機関の手口を暴き立てている。スパイ事件の捜査中に隠し撮りした映像をメディアに広報することも珍しくない。国益を守るためには手段を選ばない。そんな覚悟がひしひしと伝わってくる。

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