裏社会
気づかぬうちに、あなたも中国のスパイにされているかもしれない!  公安警察「ソトニ」と中国産業スパイの熾烈な戦い(前篇)
竹内明(TBS『Nスタ』キャスター)
「ドイツは産業スパイに反対する」メルケル独首相は中国の李克強首相に一刺しした photo Getty Images

メルケルの一刺し

7月、ドイツのメルケル首相が北京を訪問したとき、インテリジェンス関係者を唸らせる発言があった。李克強首相との共同記者会見の場で、こう切り出したのである。

「ドイツは産業スパイには反対する。それがどの国によるものであっても、だ。知的財産は保護されるべきで、産業スパイが成功への道だとは、私たちは考えない」

メルケルは「中国」を名指ししなかった。財界の要人を引き連れ、中国詣でと皮肉られた訪中だっただけに、これが限界かと思われた。だが、メルケルの発言は、前日にドイツ国内から発信されたもう一つのメッセージと合わせると、はっきりとした形となる。

発言の主は、ドイツの防諜機関・連邦憲法擁護庁(BfV)のハンス・ゲオルク・マーセン長官。彼の言葉にはメルケルのような、外交的配慮はなかった。マーセンはドイツ紙『ウェルト日曜版』の紙面で、「国内の企業は中国政府機関の脅威にさらされている」と、中国の産業スパイに対する警戒を呼び掛けたのだ。

「ドイツの中規模の企業は、自分たちが持つ技術の価値を認識しておらず、中国が何に興味を持っているのか分かっていないため、簡単に餌食になっている。中国の産業スパイは10万人以上いる」

首脳外交とインテリジェンス。表裏一体となって、中国をけん制したのである。

日本で国際的な防諜戦の最前線を担う、警視庁公安部外事課のスパイハンターはこう嘆く。

「メルケルは中国の産業スパイ活動にも釘を刺し、同盟国アメリカによる諜報活動についても真っ向から批判した。諜報活動が国家を滅ぼすという危機感を、首相と共有できるドイツの防諜当局が羨ましい。それと比べて日本は……」

産業スパイ対策は技術大国共通の問題だ。相手国と経済関係が密接になるほど、それは負の側面となって表れてくるのだ。しかし、日本では政府、国民ともに、防諜意識は極めて低い。

昨今、サイバー空間におけるスパイ活動ばかり、クローズアップされている。だが、我々が頭に叩き込まねばならないのは、古典的なヒューミント(人的諜報活動)がいまだに主流であり、技術大国である日本の会社員は、諜報大国の機関員たちに常に狙われている、ということだ。

代表的な籠絡の手口をここに紹介しよう――。

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