エボラ拡大の兆候を発見するも、手を打てなかったHealthMapの機械学習システム

日本のデング熱や西アフリカのエボラ出血熱など、恐ろしい伝染病が拡大している。HealthMapというホームページには、そうした伝染病が報告された場所が世界地図上に表示されている。

このホームページはウエブ上のニュース・サイトやソーシャル・メディアなど数十万に上る情報源から、エボラをはじめとした伝染病関連の情報を掻き集めてきて、地図上にそれらの発症地点をプロットしている。

HealthMapはAI(人工知能)の一種である機械学習の機能も備えているので、伝染病が広がる前兆を、ある種のパターンとして検出することができる。たとえば今年3月22日にエボラの発生が公式に確認される1週間以上も前に、この機械学習システムは「謎めいた出血熱が報告されている」という警告を発していた。

●"How an algorithm detected the Ebola outbreak a week early, and what it could do next" TechRepublic, August 26, 2014

もちろんHealthMapのスタッフはこの警告に気付いたが、これがそれほど重大なものであるとは考えず、結果、大がかりな発表は控えたという。

〔PHOTO〕gettyimages

ビッグデータが揃ったときには手遅れ

早期に注意を喚起しておけば、その後の伝染を防げたかもしれないだけに残念な話だが、今回のケースはこの種のシステムの限界を示しているとも言える。

機械学習をはじめ現在のAIは、ビッグデータを統計的に処理する手法に頼っているため、伝染病などの報告事例が少ない初期の段階では、システムが自信を持って「これは間違いなくエボラです」と強い警告を発することができないのだ。逆に、その後、報告件数が急増して、精度の高い解析に必要なビッグデータが揃った時には、ある意味、手遅れになっている。

HealthMapでは今回のエボラ拡大の様子を、時系列の動画形式でも表現している。これを見ると、システムが「謎めいた出血熱」を発見した3月14日から現在まで、どのようにエボラが西アフリカ諸国に広がっていったかがよく分かる。

前ページのTechRepublic記事によれば、今回の伝染パターンは数年前の豚インフルエンザに似ているというが、機械学習が使えるのは、このように過去のケースと比較して、今後の展開に備えるというような場合だ。これが今後の伝染拡大を食い止める上で、何らかの効果的な対策に結び付くことを祈るばかりだ。

著者: 小林雅一
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