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二宮寿朗「MLS、人気沸騰の背景にあるもの」

 米・MLS(メジャーリーグサッカー)の人気が上昇中だ。
 ブラジルW杯決勝当日の7月13日、シアトル・サウンダーズ―ポートランド・ティンバーズの一戦がシアトルのホーム、サンチュリーリンクフィールドで行なわれ、今季最多の6万4207人の大観衆を集めたという。1週間後に開催されたトッテナム(英国)とのフレンドリーマッチでも5万5349人。米国代表がベスト16入りした“W杯効果”も関係していると思われる。

 とはいえ、MLS人気は決して瞬間風速的なものではない。
 例に挙げたシアトルはMLS随一の人気を誇っており、年々上がっている平均観客動員数は2012年以降、4万人を突破している(ちなみに浦和レッズの2013年、ホーム試合平均動員数は3万7100人だった)。リーグ全体でも2013年は1万9000人弱と伸びていて、J1の1万7226人を上回っている。今季、さらに数字を伸ばしていくことは間違いない。

 MLSはJリーグに遅れること3年、1996年に開幕した新しいリーグである。
 途中、経営難に陥るクラブが出てくるなど、当初の12チームから10チームに減少した時期もあったが、2014年現在は19チームが活動している。来年はニューヨーク・シティFC、オーランド・シティFCの2チームが加わる予定だ。特に新設のニューヨーク・シティは、チェルシーを退団したMFフランク・ランパード、アトレティコ・マドリーのリーグ制覇に貢献したFWダビド・ビジャを獲得するなど、世界的な大物選手の加入でリーグ全体がさらに活気づいていきそうな気配がある。

米国で望まれる激しい競争

 MLSのフロントスタッフを務め、国際部アジア市場統括責任者として辣腕を発揮し、現在は「LeadOFF Sports Marketing」のゼネラルマネジャーとしてMLSのアジア事業にも携わっている中村武彦氏に話を聞いた。

――米国のサッカー熱が高まってきた要因から、まずはお伺いしたいと思います。
「米国はよく『サッカー不毛の地』などと言われますけど、それがそもそもの誤解なんですね。サッカー自体の人気は、昔からありました。バルセロナなど欧州の人気クラブがツアーで来れば、チケットは完売ですし、メキシコ代表のツアーでもそうでした。ただ、MLS自体は4大スポーツ(MLB、NHL、NBA、NHL)に比べて、人気がなかったのは確かです。移民の一世は祖国のサッカーを見ていたわけですが、それが16年、17年経って、次の世代が、生まれ育った米国のサッカーリーグであるMLSにも興味を持ち始め、ようやく人気が定着してきたのかなと思います」

――なるほど、米国にあるサッカー熱を、どうMLSに引き込むかが大事だったわけですね。
「MLS自体、マーケティング会社を持っています。たとえばクラブの試合と、米国代表の試合などをダブルヘッダーにして、米国のサッカーファンにMLSを触れてもらうことも大事でした。バルセロナの試合を観たければ、その前にニューヨーク・ブルズの試合もパッケージで観てもらう、と」

――選手の年俸総額を設定するサラリーキャップ制の導入によって、チームの経営をリーグが助けたのも大きかったのでしょうか。
「誤解してもらいたくないのは、選手の年俸をリーグが抑え込もうとしているのではないということ。コミッショナーは全チームを回って『我々はビジネスパートナーだ。ともに頑張っていこう』と伝えています。つまり、リーグが儲かれば、年俸の設定も同時に上がる。一緒に上がっていこうというスタンスなのです。
 選手の給料が何故、高騰するかと言えば、クラブが競い合うから。そうさせないために、MLS自体が選手と契約する形を取っています」

――ドラフト制度も採用していますね。
「米国では常に競争のあるリーグが一番、面白いと捉えられています。シーズンが始まる前からあそこが優勝というのはつまらない。どのチームが勝つかわからないというのが、望まれる形ですね」