新聞はジャーナリズムでもネットに負けるのか
ITジャーナリスト・佐々木俊尚インタビュー vol.1

田原 ついにインターネットの広告費が新聞を抜きましたね。

佐々木 電通が発表した2009年の日本の広告費で、始めてネット広告が新聞広告を逆転したんです。ただ、ネットの広告費が「抜いた」というより、「新聞が凋落した」という要因が大きいんですが。

 新聞の広告費は2001年には1兆2000億円以上あったんですが、2009年にはついに7000億円を切る水準にまで落ちている。

田原 半分近くにまで落ちた。

佐々木 そうです。ものすごい勢いで凋落している。

田原 テレビもそうとう低落しています。

佐々木 テレビはまだ"微減"ですね。2兆円を超えていたものが1兆7000億円になったくらいですから。落ち込み方は新聞のほうが激しいですね。

田原 新聞の広告費が落ちたということは、スポンサー企業が「新聞には広告価値がない。むしろネットでいくんだ」と判断した結果だと思いますけど、この現象をどう見ていますか?

佐々木 企業はまだ、マス、つまり一般大衆に対して情報・広告を発信しなければいけないという気持ちはある。だから、必ずしもネットだけでいいとは思っていないんです。でもそれは、テレビの広告にいっちゃうんですね。テレビはまだ若い人が見ているからです。

 だけど新聞は、どんどんどんどん読者の高齢化が進んでいて、特に都市部の30~40歳代の中心層は新聞を読んでいないことが明らかになってしまっているんです。広告効果もないし。

ネットにあって新聞にないもの

田原 でもネットは動画もあるけれど、ヤフーが扱うニュースにしても基本的には文字でしょう。同じ文字なのに、なんで読者は新聞を読まなくて、ネットに行くんですか。

佐々木 もちろん一番大きな要因は無料であるということでしょう。でももう一歩突き進めて言うと、都市部に住んでいるような政治的関心の高い人から見ると、新聞よりもインターネットの言論空間のほうが、はるかに多様性が確保されているという現実があるんです。要するにいろんな意見が出ていて、それを横断的に読めるというんです。

   朝日新聞を読んでいると朝日新聞の論しか読めないんですけど、現在はその朝日新聞が言っている内容が本当に正しいのかどうか、すごく懐疑的に受け止めている人が増えているんです。

 朝日がこう言っているけれど、それが本当に正しいのかどうか。ひょっとしたら違う見方もあるんじゃないか。そう思ってネットを見ると、「朝日が言っていることはおかしい」と書いているブロガーとかいっぱいいて、「なるほど、こういうことなのか」と初めて納得する。

 もちろん一次情報は新聞で提示されているんだけれど、それをどう意味づけるのかという部分は新聞ではカバーしきれなくなってきている、という状況があるんです。

田原 かつては、「ネットの情報には発信者に責任がない。だから信用できないんだ」と言われた。それに対して、「新聞情報というのは、朝日新聞社とか読売新聞社とかが責任を持っている。だから新聞の情報のほうが信用できるんだ」という説明がありました。

佐々木 もちろんいまでも一次情報、つまり取材して書いた記事に関しての信頼性は高いと思うんです。でも結局、いま求められている情報というのは、必ずしも一次情報だけじゃなくて、それをいまの世の中でどう位置づけるのか、あるいはわれわれが生きていく中でどうそれを判断すればいいのかというレイヤー(層)のほうが重視されるようになってきているんです。そこの部分が新聞は圧倒的に足りないんですよね。

田原 新聞情報は、テレビもそうなんだけれど、ほとんどが発表報道なんですよね。だから「財務省がこう発表したよ」、「外務省がこう発表したよ」、もっといえば「鳩山さんがこう言ったよ」、「小沢さんがこう言ったよ」という発表報道ばかりなんですよね。

佐々木 そうです。だったら通信社とあとはブログやツイッターがあれば、もうそれでいいじゃないか、という話になっちゃうわけです。

田原 いまの新聞社は、通信社とほとんど変わらないと。

佐々木 ニューヨークタイムズ(NYタイムズ)やウォールストリートジャーナル(WSJ)は、どちらかというと通信社の配信記事を元に、その物事はどういう意味なのかという見方を提示するスタイルがメインで、それに対する信頼感があります。

 一方、日本の新聞社で、その分析とか見方に対して信頼度のある新聞ってどれだけあるのかというと、まああまり思いつかないですね。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら