Sumally山本憲資【第4回】カネがなくても、新しい仕組みを作れば面白いことはいくらでもできる

物欲刺激SNS「Sumally(サマリー)」。ジャーナリスト・佐々木俊尚氏がSumallyを提供する株式会社サマリーのFounder&CEO、山本憲資氏に迫るインタビュー企画。第4回は、編集者から経営者になった山本氏の現在の仕事のスタンスとやりがいについて---。

第1回はこちらからご覧ください。
第2回はこちらからご覧ください。
第3回はこちらからご覧ください。

編集者という仕事の魅力は「情報を整理すること」

佐々木 山本さんに、もうひとつ聞きたいことがあったんです。

山本 なんでしょう。

佐々木 「雑誌編集者の生きる道について」です。2000年くらいから「雑誌はもうやばい」という話になって、当時は雑誌を諦めてネットに移る人がたくさんいました。移る先はITmediaとかコンテンツプロバイダ的なネットメディア媒体が中心だったのですが、ここ1年くらい、アプリに移っていっているんですよ。それこそ、東洋経済オンラインの佐々木編集長がNewsPicksに移籍したように。

山本 ええ、そうですね。

佐々木 これは面白いな、と思っていて。SmartNewsの鈴木さんも研究者だったけれど、アプリの業界に進みましたよね。これはどうしてなんでしょうか?

山本 いろいろな理由はあると思います。ただ、個人的に、雑誌のときも「自分が好きなことをやりたい」という気持ちももちろんありつつ、「情報をマッピングしたい」という気持ちの方が強かったんですよ。GQはそういう色合いが強かったですよね。編集長の斎藤さんがそういう人だったのもあるかと思いますが。

佐々木 でも、雑誌編集者は「かっこいい文章で表現したい」というような人が多いのでは?

山本 そういう人もいるかもしれませんが、僕はそうではありませんでした。とにかく世にある情報をなるべく多くインプットして、整理して、その状態が活かせる仕事がしたいという欲求で昔も今も働いています。だから、非常にスムーズに編集者から今の仕事に移ることができました。

佐々木SmartNewsがやっているのは、まさに整理ですもんね。なるほどなあ。

山本 あと、いかにどうベストキャスティングするか、という部分。年上であってもベテランであっても、ひとつの方向性をつくってひとつのものを作る、というのが編集者の仕事です。だから、僕は何もできなくていい。実際、何もできないですし。

佐々木 表現者ではなく、整理する人、ということですね。

山本 たとえば、北野武を表紙にしたい、と考えたとき、茂木健一郎と並んでもらったらどうか、とキャスティングする。それが実現すれば、その二人を撮りたいカメラマンなんていくらでもいるじゃないですか。そういう状況を作るのが、編集者なわけです。

佐々木 そうですね。

山本 そのためには、「北野武は今度この映画に出る」「茂木健一郎は北野武に会いたがっていた」というような情報を、常にアップデートしておかないといけないわけです。その組み合わせが面白いかどうか、というのが編集者の仕事ですから。そして、誰に頼んだらいちばん面白くできるのか、と考えてベストメンバーを集める。編集者の仕事がワンピース、ドラゴンクエスト、なんて言われる所以ですね。

佐々木 前、ある編集者に「編集者の一番の楽しみって何?」と聞いたことがあって。返ってきた答えは、「フォトグラファーに撮影を頼んで、作家の原稿が届いて、デザインが決まって、ぜんぶ揃った状態で、よし整理するぞ、というときだ」って。それを聞いて、「自分には編集者は無理だ」と悟りました(笑)。

山本 パズルのピースを集めてはめるのは楽しいんです。

佐々木 『キュレーションの時代』という本を出したとき、「キュレーションはエディット(編集)とは違うんですか?」と散々聞かれました。僕の中の定義だと、作って世に出すのがエディターの仕事で、キュレーターはあくまで消費するだけなんです。ただ、今のネット世界でキュレーションが重要視されているということを見ても、編集者の仕事は必ずしもかっこいい文章を書いてかっこいい雑誌を作るということではなく、プラットフォーム的に情報を整理することなのかもしれませんね。

山本 僕の場合、「選ぶ僕のセンスを見てくれ」という欲求はないんです。プラットフォーマーとしてのセンスを見てくれ、という欲求はあるんですが。雑誌を作っていて、「僕の好きな人を出したい」というような編集の仕方をすると、「その人が出ていれば何でもいい」ということになってしまいます。たとえば僕は高城剛さんのファンですが、「好きだから出てほしい」となると、彼が出ていればなんでもOKになってしまう。僕がやりたいのはそういうことではなくて、発売直後のテスラとポルシェの間に高城さんに立ってもらって、「これからはエコクールカーの時代だ」というメッセージを出す、ということ。そこまでやらないとつまらない。

佐々木 雑誌が落ちてきた結果、「編集の仕事って一体何なのか」という究極の質問で余分なものが削ぎ落とされていったんでしょうね。

山本 編集者は、呑んでアナログの生の新しい情報を仕入れて、それを整理して世の中に出すのが仕事のひとつだと思います。呑み屋に編集者がいない時点で、どこで情報をとるんだ、って話もよく聞きます。それくらいの前のめり感がないと、これからの編集者は難しいのかもしれません。僕はSumallyの仕事も編集者としてやっている部分もあって、常に頭を最新にアップデートし続けてできるだけ誰とでもできるだけ近い目線で話せる状態にしておこう、と心がけています。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら