カイジ「どん底からはいあがる」生き方の話
【第7回】他人に貢献することこそが、自分の存在意義


漫画『賭博黙示録 カイジ』とは?

自堕落な日々を過ごす主人公、伊藤開司(いとう・かいじ)。そのカイジが多額の借金を抱えたことをきっかけに「帝愛グループ」をはじめとする黒幕との戦いに挑んでいく大人気漫画。命がけのギャンブルを通じて、勝負師としての才能を発揮するカイジだが、その運命は果たして・・・。

(作者:福本伸行 講談社『週刊ヤングマガジン』で1996年11月号~1999年36号まで連載された作品)


【第6回】はこちらをご覧ください。

「好きなことをして生きる」という考えの落とし穴

好きなことだけをして生きる---それが理想の生き方・働き方だと思っている人は多いかもしれません。ぼくも、基本的にはその考えに賛成です。どうせやるなら好きなことをして、それでお金を稼いだほうがいい。いくら給料がよくても、嫌な仕事をしつづけて人生を終えるのは嫌です。

でも、好きなことだけをして生きたいと願っている人たちに、以前からぼくは少しだけ違和感を覚えています。

以前、「働き方」をテーマにした講演に来てくださった方からこんなことを言われたことがあります。

「木暮さんは好きなことができていいですね、うらやましいです」

また、サラリーマン時代の同僚と飲みに行ったときに、こんなことを言われました。

「お前はうまくやったよな、ずるいよ」

たしかにぼくは、2009年に「これからは本を書いて生きていこう」と決心して、会社を辞めました。独立してからは、毎年5冊程度のペースで本を書いてその印税で生活をしています。最近では、本をきっかけとして、テレビにコメンテーターとして出演したり、社員研修や講演の依頼もいただくようになりました。

サラリーマン時代と比べると、生活はガラリと変わりました。たしかに、ぼくは、文章を書くことが好きなので、今の方が好きな仕事をしています。また、朝が苦手なので、「(その気になれば)いつまででも寝ていられる生活」は理想的と言えるかもしれません。でも、人から「うらやましい」とか「ずるい」と言われると不思議な気持ちがするのです。

なぜならぼくは、好きなことを仕事にして、好きなように生きてはいますが、決して楽なことをしているわけではいないからです。

いまは、土日祝日関係なく仕事があります。空いた時間には原稿を書いたり、講演の準備をしたり、次のビジネスの企画をしたりしています。"労働時間"は、サラリーマン時代の2倍ぐらいになっている感覚があります。

また、万一、風邪をひいてしまったら、代わりがいません。インフルエンザなど、もってのほかです。講演の予定が入っている日にインフルエンザにかかったら、などと想像するとぞっとします。

そのため、サラリーマンのころよりもずっと食べ物や睡眠に気を使い、全体的にものすごく緊張感のある生活をしています。要するに、ぜんぜん"楽"ではないということです。

カイジ「勝つべくして勝つ!」働き方の話』では、福本伸行先生の"快"と"楽"の定義について書きました。簡単に言うと、こういうことです。

人生の喜びには、"快"と"楽"がある。努力して、必死にがんばって成功し、達成感を味わった時の喜びが"快"。家で横になって、ビールを飲みながらナイターを見るのが"楽"。

"楽"を追求していると、やがてはお金がなくなります。また、ずっと堕落した生活を送っていると、それはそれで飽きてきます。"楽"を続けることはできません。人生の喜びを得るには"快"を目指すしかないというのが、ぼくの結論です。

ただ、"快"には努力が伴います。苦痛も伴います。好きなことをして生きていくといっても、すべてが思い通りに行くわけではありません。どんな時も笑っていられるわけではありません。失敗して悔しい思いをしたり、挫折することもあります。

それらを含めての「好きなことをして生きる」なのです。決して、のほほんと気楽に生きられるわけではありません。

ぼくがお伝えしたいのは、「好きなことをして生きる」なんて意味がない、そんなことは目指さない方がいい、ということではありません。むしろ逆で、すべての人に目指してほしいと思っています。

ただ、その生活が決してユートピアではないということは知らなければいけません。好きなことをして生きるための"準備段階"で苦しいことがあるのではありません。好きなことをして生きているまさにその時にも、常に苦しいことはあるということを、ぜひ知ってください。

そして、それを知った上で、ぜひ好きなことをして生きてほしいと思っています。

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