二宮清純レポート オリックス・バファローズ投手 西勇輝 覚醒した「やんちゃ坊主」

コントロールは抜群。マウンド度胸もある。しかし西には、「1球への執念」が足りなかった。23歳の若者は今季、いかにそれを身につけたのか。その背景にある、知られざる苦悩と努力に迫った。

エース金子の教え

開幕前、オリックスの躍進を予想した評論家はほとんどいなかった。無理もない。昨季は借金7の5位だったのだから。

それが、どうだろう。8月13日現在、58勝40敗1分でパ・リーグの2位につけている。首位を走る福岡ソフトバンクとのゲーム差は4。これ以上、離されるわけにはいかないが、追撃不可能な差ではない。

目を見張るのが2・80という防御率だ。これは12球団随一。エースの金子千尋とともに投手陣を牽引するのが、今回の主人公・西勇輝である。

17試合に登板し、12勝5敗、防御率2・81。勝ち星は目下、ハーラーダービーのトップである。

2011年=10勝(7敗)、'12年=8勝(3敗)、'13年=9勝(8敗)とコンスタントに白星を積み上げてきた23歳は6年目の今季、覚醒した。

どこが変わったのか。

本人は言う。

「1球に責任を持って投げるようにしています」

ピッチング同様、歯切れがいい。まずは、ど真ん中にストレートを投げ込んできた。決意の背景には悔恨があった。

昨年7月7日の北海道日本ハム戦。敵地で先発した西はミチェル・アブレイユにダメ押しホームランを打たれ、敗戦投手になった。

「要求されたのはアウトローのボール球だったのに、高めに浮いてしまった。構えたキャッチャーミットと、ボールにこれだけの幅が生じたのは、〝心の乱れ〟があったからでしょう。確かに、あの時は〝えいっ、やぁ!〟と投げてしまった。

試合後、森脇浩司監督に〝無責任なボールがあった〟と叱られました。〝気持ちの乗っていないボールだ〟とも。100球投げて、100球とも責任を持つ。それはすごく大変なことですけど、1球が命取りになることは事実です。その1球を後悔しても元には戻れない。今年は、その部分を意識してやっています」

ネット裏の目は、今季の西をどう見ているのか。主に関西地区を中心に評論活動を展開する佐野慈紀は語る。