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笹井芳樹(理研 副センター長)を追い込んだ「小保方への愛情」と「山中教授への対抗心」「逃げ場」も「勝ち目」もない。あるのは絶望だけだった
週刊現代 プロフィール

「笹井さんは世界で初めてES細胞による網膜の立体生成を成功させるなど、国内では向かうところ敵なしでした。ところがそれが一変し、山中教授のiPSにばかり予算が集まる状況になり、自分の研究が縮小していくのではないかと、危惧していたのでしょう。

STAP細胞をブチ上げた1月の会見でも、iPS細胞をウシ、STAP細胞を魔法使いに例えたイラストを配布するなど、その優位性を執拗に主張していました。いかに山中教授を意識していたのかが分かります」(科学ジャーナリスト)

山中教授に後れをとってはいけない—。功を焦る笹井氏の目には、穴だらけのSTAP論文が、逆転のための「最終兵器」に見えたのかもしれない。

しかし、山中氏へのライバル心をむき出しにし、STAP細胞に固執すればするほど、笹井氏の足元は大きく揺らいでいった。

「6月12日の理研第三者委員会によるCDB解体提言が、相当こたえたようです。CDBは笹井さんが立て役者となって建設した、我が子のような存在。笹井さんの様子がおかしくなったのは、それからでした。突然『全部、僕の責任だ』と言ったかと思えば、『本当に、僕がすべて悪いのか?』と不満を口にする。不安定な状態が続いていました」(前出の笹井氏知人)

STAP論文はやはりデタラメだったのではないか? という疑いが日増しに濃くなっていく中、6月30日には小保方さん本人による再現実験への参加が決定。ところが彼女は、「準備期間が必要」「勘を取り戻す」などと言うだけで、一向に再現実験を始めようとはしなかった。

そして「笹井城」が残った

「個人的には、小保方さんの再現実験も笹井さんの苦悩を助長したのではないかと思います。目の前で何もできない、しようとしない小保方さんを見て、絶望したのかもしれない。どんな理屈を取り繕おうと、小保方さんが再現できなければ、すべて終わり。笹井さんは崖っぷちに追い込まれていました」(理研関係者)

逃げ場も勝ち目も失った笹井氏の目の前には、同氏が研究者人生の集大成として進めていた「神戸医療産業都市構想」の象徴である、融合連携イノベーション推進棟の建設現場があった。

「CDBに隣接し、再生医療関連の研究機関が入る予定のこのビルは、今年4月から着工しています。土地は神戸市が無償提供して、総工費は38億円にも達する大型プロジェクト。笹井さんが政官学をまとめて資金をひっぱってきたため、『笹井城』と呼ぶ人もいます。笹井さんは『このプロジェクトで世界の再生医療を牽引したい』と語っていました。STAP細胞の研究は、その計画推進のための旗印になるはずだった。騒動が起きてからというもの、笹井さんは『私がいなくなったら、推進棟はどうなるんだ』と漏らしていました」(前出のCDB関係者)