川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」

「イスラム国」と闘うクルド族への武器供与を決定したドイツ政府のジレンマとは

2014年08月29日(金) 川口マーン惠美
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〔PHOTO〕gettyimages

武器供与を決定したドイツ連邦安全保障委員会

先週、ドイツ政府がクルド族に対する武器の援助を決定したと書いた(記事URL)。メルケル首相が、9月1日、それについての政府声明を臨時国会の場でおこなうという。

ただ、それにより、この決定が変わるわけではない。武器輸出に限っては、ドイツ政府は、議会の承認なしに許可することができる。許可するかどうかを決めるのは、内閣のメンバーで構成された連邦安全保障委員会というところで、会議は秘密裏に開かれ、時期や内容を公表する義務は一切ない。一年以上たってから、報告書を提出すればよいだけだ。

委員会の構成メンバーは、首相、外相、内相、財相、法相、国防相、経済技術相、経済援助相で、そもそもこの委員会は、1955年にアデナウアー政権の下でつくられた連邦国防委員会をそのまま継承したものだ。当時は、西ドイツはソ連の脅威にさらされており、その後の冷戦下でも、国防は最重要事項であった。ゆえに、武器輸出も国家機密に属していたのである。

ところが状況は変わり、今でもこれを極秘にする意味があるのかという疑問が湧いている。3年前には、サウジアラビアにドイツの優れものの戦車「レオパルト2」の輸出を決定した秘密会議の内容がマスコミに漏れてしまい、それ以来、武器輸出を秘密ではおこなえない雰囲気となっている。ちなみにドイツは、アメリカとソ連に次ぐ世界第3位の武器輸出国だ。

今回のクルド族への武器輸出は、従来のように軍事産業が輸出するのを委員会が認めるのではなく、ドイツ政府からの供与となる。それもあって半公開のような形で決められたが、政府がこの決定を議会に承認してもらおうと考えているわけではない。臨時国会は、「武器を供与しますよ」ということを発表する場になるのだろう。

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