サードプレイス 町田徹の経済ジャーナル
ゲスト:塩原俊彦(高知大学准教授)
―ウクライナ危機をどう読むか―

※この原稿は「サードプレイス 町田徹 経済ジャーナル」2014年4月8日放送分を書き起こしたものです。書き起こしにあたっては、読みやすくするために必要最低限の編集を行っています。

ウクライナで起きたのクーデターの本質とは

町田: 経済ジャーナリストの町田徹です。今日は、「ウクライナ危機をどう読むか」と題して、3月28日にロシア経済の専門家・高知大学の塩原俊彦准教授にうかがったインタビューをお送りします。

はじめに、私から簡単にバックグラウンドをご説明します。日米欧等の主要七カ国は3月24日、G7の緊急首脳会合を開いて当分の間、G8からロシアを締め出す方針を打ち出しました。ロシアがクリミア半島を併合したことに対する制裁措置です。

一方でロシアはクリミア半島の自国領土化を進めるだけではなくて、ウクライナ東部等、他の地域でも同様の動きをしかねない、ロシア軍の大規模な軍事行動も否定はしきれない情勢にあります。そして、この問題は日本にとっても、我々にとっても、北方領土だけではなく、天然ガス貿易を通じて日本の電力、エネルギー危機を助長し、経済や暮らしまで左右しかねない大きな問題といえます。とても対岸の火事だとは言っていられない問題なわけです。

そこで、この番組の前番組である「オンザウェイジャーナル」でもロシア問題の解説をお願いしてきた塩原さんに、最新情勢をうかがうことにしました。塩原さんは日本経済新聞社、朝日新聞社を経て現職に就かれた研究者で、モスクワ特派員も経験されています。先月もモスクワに長期滞在され、現地の有力者に精力的に会い、情報収集をして来られたと聞いています。

今回は、普段なかなかお話になれないトップシークレットの一端もうかがえるのではないかと期待しています。それでは、早速、インタビューを始めましょう。

塩原さん、先ず、ズバリ聞かせて下さい。今回の原因になっているウクライナのクーデターの本質をいったいどのように見ればよいのでしょうか?

塩原: 一番重要な事は、極右勢力があってクーデターが行われたということです。順序として、あたかも、ヤヌコビッチ政権という親ロシアの政権を倒したクーデターがあり、したがって、そのクーデターは正当なもので、それに乗じてクリミア半島を併合したロシアはけしからんというような論理が通用するような時代では全く無い、ということです。

町田: ただ、一般には日本でそのように報じられてしまっている。その前提が間違っているということですね?

サードプレイス TUESDAY
町田徹 経済ジャーナル

●パーソナリティ: 町田徹
---デフレ不況の閉塞感から、いつまでたっても脱却できない日本。 日本の経済は今後どうなるのか? またどうすべきなのか? 経済ジャーナリスト町田徹さんが、世界の経済の動向も踏まえ、ゲストに詳しく聞いてまいります。

塩原: 全く間違えています。どういう事かというと、そもそもウクライナ経済は破綻に近い状態にあって、2012年10月の議会選挙で既に450の議席のうちの252の議席は比例代表制によって選出されるのですが、その内の10.44%を「全ウクライナ連合スヴァボーダ」(=自由という意味)というネオ・ナチグループが得票し、37議席を得ていたことがあります。そもそも2012年の段階で極めて深刻なネオ・ナチグループの進出という事態が起きていたのです。

この人たちだけではなく、もっと過激なネオ・ナチグループが武力を用いてクーデターに参画し成功に導きました。この連中は、こうした混乱の中で「右翼セクター」という名前の政党をいま現在つくっていて、いずれの右翼も政権内部に参画しています。

いま言った「自由」という右翼グループは、副首相や農業相、環境相、検事総長まで輩出しています。もっと極端なネオ・ナチグループは国家安全保障国防会議の書記、副書記を出しています。これは国防省や内務省、警察を管轄するようなポジションです。このような枢要なポジションをネオ・ナチグループが牛耳っている現実があるわけです。

そうした現実があるにもかかわらず、どうしてこのような暫定政権を支持し、支援までするのか。むしろ、このようなグループを排除しなければウクライナからヨーロッパ全土にネオ・ナチ運動が伝染してしまうかもしれないという非常に危機的な状況にあるにもかかわらず、いま私が申し上げたような事実について、西側の報道でご覧になったことがありますか?

町田: ありません。ウクライナ経済が厳しいというような事はイギリスやフランス等のTIMESを読んでいるとかなり出てきますが、右翼勢力の話はほとんど出てこない。

塩原: それが非常に問題をおかしくしているわけです。そのようなグループが現に、いまの暫定政権にいるからこそ、ウクライナに多くのロシア人を抱えているロシアのプーチンは非常に懸念を強めていました。

勿論、プーチンが主導したクリミア併合は国家主権の侵害にあたるかもしれないのですが、そのような事態は、先ず、ウクライナにおけるネオ・ナチグループの急拡大という所に問題の根があるわけで、これを無視して、あるいは軽視してロシアだけを非難し、あたかも新冷戦になったかのような議論をするのは全く問題の本質を見ていないということです。

したがって、そのような人たちが何かをしても問題の解決にはならないし、ウクライナ経済はいま申し上げたように2012年の段階では極めて破綻状態にあったわけで、繰り返しIMFは支援をしていますけれども、そのようなものも総て失敗していて、いまさらまたカネを出してどうするんだ、ということです。本当は、ウクライナの立て直しはロシアの協力なくして実現など出来ないわけです。

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