朝日新聞からの新社長の下、低迷するテレビ朝日は再浮上できるか?

2014年08月27日(水) 高堀 冬彦
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朝日新聞からの恩恵が裏目に出る!?

そもそも一人の人間が森羅万象について語るコメンテーター制度について、疑問の声があがっている。博覧強記の南方熊楠でさえ、すべての事象を解説するのは無理だっただろう。ベテラン記者やジャーナリスト、評論家も同じ。それならテーマごとに専門家を登場させるか、あるいはキャスターが私見と断った上で、考えを述べるべきではないだろうか。

新聞の場合はそうだ。テーマに合わせて解説役の識者を登場させるか、あるいは取材した記者が私見を署名で書いている。何でも語るコメンテーターが登場するのは日本のテレビだけ。ニュース、ワイドショーのコメンテーター制度の嚆矢は『Nステ』だが、大新聞の記者なら、何でも正しいことを言ってくれると信じている視聴者など今どきいるのだろうか。

『報ステ』については、古舘伊知郎氏の胸中も気になるところ。約10年ぶりに応じた雑誌インタビューでは「もうこれだけやらせてもらっているから、別に明日降ろされても幸せ」などと、意味ありげな言葉を口にしている(AERA7月14日号)。

それより目を引いたのは以下の発言だ。

「世の中って嘘八百で成り立ってるし、ホントのところは新聞も雑誌もテレビも伝えないし、たまに言外に漂わせたり、におわせたり、スクープで追及したりってことはあっても、ほとんどがお約束で成り立ってるわけですね。プロレスですよ、世の中。完全にプロレスです」(同)

報道人が「本当のところは伝えない」と口にしたのだから、穏やかではない。自由に発言できていない思いが強いのだろうか。事実、古舘氏が番組内で隣の恵村氏に対し、「ところで、おたくの従軍慰安婦報道問題、どうなんですか? 」と尋ねるのは無理だろう。両社は資本で深く結びついているばかりでなく、テレ朝のトップは朝日新聞から来たばかり。これまで『Nステ』、『報ステ』は朝日色の恩恵ばかりを授かってきたように見えたが、これからは裏目に出ることもあるかもしれない。

ドラマの放送時間帯の誤算

さて、テレ朝の視聴率争いでの最大の誤算は、7月期のドラマの不振だろう。イチ押しであったはずの『信長のシェフ』が、まさかの低空飛行。視聴率を初回から並べてみると、9.7%、6.1%、6.9%、7.1%、5.6%、7.4%---。木曜の午後8時というゴールデンタイムでの放送でありながら、6話までの平均は7.5%にとどまっている。

『信長の――』は昨年1月から3月に金曜の午後11時台に放送され、遅い時間帯ながら、平均10.8%という高水準の視聴率を得た。その実績を引っ提げてのゴールデン昇格。前作より質が大きく劣化したとは思えないので、どうやら放送時間帯が視聴者の生理と合わなかったらしい。

テレ朝は中高年層の視聴者に強い。それは個人視聴率のデータを見てもはっきりしている。だが、午後11時台となると、視聴者層はぐっと若くなる。その遅い時間帯で当たったドラマを、そのまま主戦場にコンバートしたことが誤算を招いた気がする。

オーソドックスな時代劇のファンが見ている午後8時台で、戦国時代にタイムスリップした料理人の物語。若者には画期的で新鮮に映るだろうが、中高年層には荒唐無稽に見えてしまう気がする。そもそも食を絡めるドラマ自体が、小腹の空く深夜帯向きだと思っている。『孤独のグルメ』(テレビ東京)もゴールデンでの勝負は厳しいはずだ。

テレ朝の7月期におけるゴールデンのドラマは、ほかに水曜午後9時台の『警視庁捜査一課9係』、木曜午後9時台の『ゼロの真実~監察医・松本真央~』。両ドラマの視聴率も微妙で、二桁台を維持するのが精一杯といったところ。『信長――』と同じく、作品の質に問題があるとは思えないから、これも戦略の読み違えという気がする。

2000年代以降、テレ朝のドラマは、「刑事」「検事」「監察医」「捜査」がやたら目立つ。さすがに視聴者側も食傷気味なのではないだろうか。どんなに美味な料理だろうが、食い続ければ飽きる。

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