連載「男のパスタ道」第3回
パスタをおいしくする「ゆで方と塩の入れ方」3つの正解

パスタの「コシ」を調べてみた。右がゆでたグルテン、左が生。

【第2回】はこちらをご覧ください。

前回、アルデンテの食感が、パスタの主成分であるデンプンの糊化の進行によってもたらされることを見た。もう一つの主成分(全体の11~14パーセント)であるタンパク質がもたらす食感について考えてみたい。

パスタの「コシ」は、なぜうどんの「コシ」と違うのか

そのためにパスタのタンパク質の大部分を占めるグルテンを取り出して、その性質を探ってみる。パスタの原料であるデュラム小麦のセモリナ(粗挽き粉)に水を加えてよく練り、生地にする。その生地をボウルに移し、水を加えて揉む。生地中のデンプンは水の中に流れ出て、水はミルクのように白く濁る。水が白く濁ったら、その液体は別の容器に移し、生地には新しい水を足して揉む。これを繰り返す。

すると最後に、よく噛んだガムみたいにプニュプニュとした感触の、黄色い塊が残る。これが「グルテン」と呼ばれるタンパク質だ。パスタのタンパク質の大部分はグルテニンとグリアジンという物質だが、それらを練り合わせると、グルテンが形成されるのである。

グルテンについては、その網目状の構造においても、その役割においても、筋繊維をイメージするとわかりやすい。パスタに使われるデュラム小麦のグルテンは網目が太く、よりランダムで複雑にからまっている。普通小麦のグルテンよりも弾性が高いのだ。より伸びにくい硬い筋肉を持っていると言えるかもしれない。

これは実際にデュラム小麦のセモリナで生地を作ってみると体感できる。引っ張ると強い抵抗を感じ、手を離すとすぐに元の状態に戻ろうとする。無理に引っ張ると、それほど伸びずにブチンとちぎれてしまう。筋断裂、いわゆる肉離れのようなものである(実際、肉離れを起こしたとき、体の中からブチン! と音が響いてくるそうだ)。

実は、この特徴が食感に関係している。パスタは例えばうどんなどに較べて、コシがありつつも、プツンプツンと歯切れがいい。うどんとは明らかに異なる食感は、デュラム小麦のグルテンならではの特徴がもたらしているのだ。

さて、このグルテンをゆでることで、パスタのコシについて探っていこう。まずは先の方法で取り出したグルテンを小分けにし、沸騰させた1パーセント程度の食塩水でゆでてみる。

お湯の中でグルテンはふくらむ。グルテンが空気を包み込むことでできた気泡が、熱によって膨張するからだ。しかし、ゆで続けるとグルテンは徐々に硬くなり、伸びにくくなってくる。

食べてみれば、1分ほどゆでたものはクニュクニュとした食感で噛み切りにくい。もう少し長くゆでると、歯ごたえが増す一方、心地よく噛み切ることができるようにもなる。10分ほどゆで続けるとかなり硬くなり、引っ張ってもあまり伸びず、すぐにちぎれる。グルテンはデンプンと違って水をよく吸う。水を吸ったグルテンに熱が加わると、グルテンの中の分子同士の結びつきが強くなって、より強固な弾力が生まれるのだ。