松井孝治×西田亮介対談【後編】 「市民が積極的・主体的に身近な公共にかかわる社会をつくりたい」いま、改めて「公共」を問う

2014年08月31日(日) 西田 亮介
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パブリックな事柄は、もう少し身近であるべき

西田亮介氏

西田: この「新しい公共」の考え方を、政権が変わったあとの、現在の政治に具体的に導入できるかどうかを考えたときに、どのあたりが突破口になると思われますか? それとも難しいでしょうか。

松井: 周り道かもしれないけど、若い人たちが体感的に「これだ」と思ってくれないといけないと思います。要するに、公共というものが遠くにあって大きいもので、実感できない。たとえば予算3兆円とか子ども手当5兆円とか言われても、具体的に想像つかないです。

やはりパブリックな事柄は、もう少し身近であるべきです。たとえば、大学生が休暇を利用してNPOなどが主催するツアーでも、被災地に行って仮設住宅をまわり、その人たちがどういう暮らしをしているのかを知る。一週間くらい滞在して、世の中との接点を持って、これだけ貢献できるんだと、それぞれが実感することが大切だと思います。

選挙を通じて民主主義を実現していくことも大事だけれど、民主主義は選挙だけではないと思います。選挙で選ばれた人だけが公共の設計とか運営をして、それを有権者がチェックして落とすのだけが民主主義ではありません。それぞれが身の丈に応じた公共を体験することが大事になってくると思います。

選挙制度を変えていくと同時に、全部を政治や行政に委ねず、自分が小さなパブリックな世界の中で、直接的に社会に参画する人々を増やしていく。市民が自分たちだけでは手に負えないことも把握しながらも、役割分担して積極的・主体的に身の回りの公共にかかわっていく社会をつくりたいんです。

西田: 「新しい公共」についてもう少し伺いたいと思います。民主党は、結党の理念として、市民社会との協働を掲げていました。また、2009年の政権交代における、キャッチフレーズのひとつが「新しい公共」でした。

松井先生も、平田オリザさんとの共著『総理の原稿――新しい政治の言葉を模索した266日』(岩波書店、2011年)のなかでその舞台裏について詳しくお書きになっておいでです。まさに前述の行政改革会議のなかで出てきた、小さな政府と大きな社会の組み合わせに積極的に取り組もうという姿勢が感じられました。その後、「新しい公共」円卓会議などでの議論を踏まえて、寄附税制の改革などに結実します。

しかし、当初案では、もっと斬新なアイデアが多数議論されていました。「新しい」と名乗るっているにもかかわらず、地縁であるとか、ソーシャルエンタープライズまで、十把一絡げに「新しい公共」の中に入ってしまい、途中で各ステイクホルダーの利害関係が一致しなくなってしまったようにも見えました。

そのような視点からすると、「新しい公共」は総覧的ではなく、社会起業家にフォーカスするといったように、センターピンを定めたほうが良かったのではないかと見えなくもないですが、そのあたりについてはいかがお考えでしょうか。

松井: おっしゃる通り、そうしたターゲティングが必要でしょう。しかし、同時に、ぼくは中央集権で事業別のメインフレームが多数並立している全体の統治システムを変え、そして小さな公共が分散連携するような「新しい公共」のかたちをつくるような統治の仕組みの改革も必要だと思っています。

従来の縦割りの公共ではなくて、小さな公共の世界を中央省庁や地方自治体がどう連携してつないでいくかということを考えていました。「新しい公共」分野のビジネスモデルに着目して、社会事業法人のような法人類型を作っていくなどの取り組みは今後あり得ると思います。ぼくが関心を寄せていたのは、あくまで統治システムですが、公務員制度を変えて、中央官僚とNPOの方々など民間公共人材が人事交流できる制度改革などその視点でもっと出来る事もあると思います。

推進会議のときには、最大のキラーコンテンツとなる寄附税制は実質的には決定済みでした。やや丸まってしまったように見えるのは、NPOや社会起業家中心の人選に対する反発みたいなものがあり、そこに少し配慮したために言いたいことの焦点がぼけたのかもしれません。

ただ、いずれにしても重要なのは、リーダーが会議にフルコミットするかどうかです。結局、二代目となって総理大臣がエンジンになっていなかった。政権の重要テーマに関しては、トップ自身が熱い思いを持たないとダメだと思います。ここがぼくの一番の後悔であるかもしれません。

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