川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」

シリア内戦で勢力を拡大する「イスラム国」にドイツ政府が戦々恐々とする理由

2014年08月22日(金) 川口マーン惠美
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ISに参加したオーストラリア人男性はツイッターやフェイスブック上で写真を投稿していた

破竹の勢いで躍進するIS

シリア内戦で、イスラム原理主義の過激テロ組織IS(Islamic State:イスラム国)に加わっていたオーストラリア人が、7歳の息子に、仕留めた敵の生首を抱えさせて写真を撮り、それをツイッターに投稿していたという。この写真は、子供の目と生首にはぼかしが入っているが、男の出身国であるオーストラリアでは、新聞の1面に掲載されたので、国民はショックを受けた。男はシドニー西部出身の33歳で、テロ計画にかかわった前科があるという。

8月20日には、ISが、アメリカの空爆への報復として、長く拉致していたアメリカ人ジャーナリスト(40歳)の首を切り落とした。その様子を映したビデオがインターネット上で流れたが、殺される前、跪いたジャーナリストは、キューバのグアンタナモの囚人と同じオレンジ色の服を着せられていた。処刑を執行したのはISに加わっているイギリス国籍の男だという。ビデオは、イギリスの外務省が本物だと認めた。

ISの躍進は破竹の勢いだ。ドイツのニュースでは毎日、イラク北部のクルド族がISから命がけで逃げている映像が流れる。クルド族は、「ヤズィーディー」という、キリスト教、ゾロアスター教、イスラム教の混ざり合ったような民族固有の宗教を持っている。

しかし、これはイスラム原理主義者にしてみれば邪教で、ISは、異端者であるクルド人をどんどん殺戮しはじめた。首を切ったり、十字架に張り付けたりして殺しては、インターネットに映像を出す。婦女は凌辱され、誘拐されているともいうが、あまりに混乱していて、その数など確かな情報はない。わかっていることは、クルド族が、ただただ逃げまどっているということだけだ。

50度近い灼熱の中、木が一本も生えていない岩だらけの坂道を、何も持たず、子供だけを抱えてよろよろと歩いている人々の様子を、アメリカ軍が上空から撮影しながら、水や食料などを投下していた。しかし、水のボトルは落下傘が付いていたにもかかわらず、多くが破裂してしまったという。地面に浸み込む水を眺める無念さは、いかばかりか。

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