テロ 国家・民族 シリア
シリア内戦で勢力を拡大する「イスラム国」にドイツ政府が戦々恐々とする理由
ISに参加したオーストラリア人男性はツイッターやフェイスブック上で写真を投稿していた

破竹の勢いで躍進するIS

シリア内戦で、イスラム原理主義の過激テロ組織IS(Islamic State:イスラム国)に加わっていたオーストラリア人が、7歳の息子に、仕留めた敵の生首を抱えさせて写真を撮り、それをツイッターに投稿していたという。この写真は、子供の目と生首にはぼかしが入っているが、男の出身国であるオーストラリアでは、新聞の1面に掲載されたので、国民はショックを受けた。男はシドニー西部出身の33歳で、テロ計画にかかわった前科があるという。

8月20日には、ISが、アメリカの空爆への報復として、長く拉致していたアメリカ人ジャーナリスト(40歳)の首を切り落とした。その様子を映したビデオがインターネット上で流れたが、殺される前、跪いたジャーナリストは、キューバのグアンタナモの囚人と同じオレンジ色の服を着せられていた。処刑を執行したのはISに加わっているイギリス国籍の男だという。ビデオは、イギリスの外務省が本物だと認めた。

ISの躍進は破竹の勢いだ。ドイツのニュースでは毎日、イラク北部のクルド族がISから命がけで逃げている映像が流れる。クルド族は、「ヤズィーディー」という、キリスト教、ゾロアスター教、イスラム教の混ざり合ったような民族固有の宗教を持っている。

しかし、これはイスラム原理主義者にしてみれば邪教で、ISは、異端者であるクルド人をどんどん殺戮しはじめた。首を切ったり、十字架に張り付けたりして殺しては、インターネットに映像を出す。婦女は凌辱され、誘拐されているともいうが、あまりに混乱していて、その数など確かな情報はない。わかっていることは、クルド族が、ただただ逃げまどっているということだけだ。

50度近い灼熱の中、木が一本も生えていない岩だらけの坂道を、何も持たず、子供だけを抱えてよろよろと歩いている人々の様子を、アメリカ軍が上空から撮影しながら、水や食料などを投下していた。しかし、水のボトルは落下傘が付いていたにもかかわらず、多くが破裂してしまったという。地面に浸み込む水を眺める無念さは、いかばかりか。

逃避中、まず、子供や妊産婦が力尽きて乾いた大地に伏したまま帰らぬ人となり、その他の人々も、飢えよりもまず、渇きで多くが死亡した。安全なところまで逃げられた人たちの衰弱した様子を映像で見る限り、事態は信じられないほど緊迫していることがわかる。

それなのに、この惨状を尻目に、バグダッドではいまだに政治家が権力争いに明け暮れている。このままだと、イラクはまもなく解体してしまうだろう。30年ほど前、私はイラクに2年以上も住んでいたことがあるが、あのころのイラクはイランと交戦中で物資は不足していたものの、治安はよく、まだちゃんと国家として機能していた。

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