賢者の知恵
2014年08月30日(土)

自殺をテーマにした異色の2冊の著者が語る「なぜ徳島県海部町は日本一自殺率が低いのか」

末井昭(『自殺』)×岡檀(『生き心地の良い町』)前編

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左から:末井昭氏、岡檀氏、小堀純氏

日本で最も自殺率の低い「自殺“最”希少地域」のひとつ、徳島県の海部町を4年にわたって調査し、自殺率の低さの謎に迫った『生き心地の良い町』(講談社)が反響を呼んでいる岡檀さん。母親のダイナマイト心中、愛人の自殺未遂、3億の借金・・・・・・衝撃の半生と自殺者への想いを丸裸で綴った『自殺』(朝日出版社)で第30回講談社エッセイ賞を受賞した末井昭さん。「自殺」をテーマに綴られた異色の2冊をめぐる対話をお届けします。聞き手は編集者の小堀純さんです。

* * *

「自殺」も「病」も市にだせ

謎を解き明かしていくように

末井昭(以下末井) 大勢のみなさんに集まっていただき、ありがとうございます。『自殺』を書いた末井です。よろしくお願いします。

今日は、『生き心地の良い町』という本をお書きになった岡檀さんとお話するのを楽しみにして来ました。岡さんは、和歌山県立医科大学保険看護学部で講師をされています。

司会をしていただくのは、京都造形芸術大学客員教授で編集者の小堀純さんです。小堀さんとは30年前から親しくしてもらっていて、仕事の方でも憂歌団の本や中島らもさんの本の編集でお世話になりました。小堀さんは中島らもさんと親しく、躁病、うつ病を繰り返していたらもさんの話も聞けると思います。

自殺』著:末井昭 税抜価格:1600円 ⇒Amazonはこちら

小堀純(以下小堀) ここに来る途中、京阪電車の中で『自殺』を読んでいたのですが、やっぱりみんなが見ますね。「何読んでるんだ、こいつは?」と。電車では岡さんの本を読んでくれば良かった(笑)。

末井さんは『自殺』を書かれたあとに岡さんの本を読んだんですね。

末井 そうです。『生き心地の良い町』は2013年の7月に出版されているんですね。ちょうど『自殺』を書き終わった頃だったんですけど、読んでいると、謎解きみたいな感じでどんどん引き込まれるんですよ。日本で最も自殺が少ない海部町ってところがあって、徳島県でしたか?

岡檀(以下岡) はい。徳島県の南の方です。

末井 岡さんがそこに調査に行くところから始まるんですけど、なぜ自殺率が低いのかっていうことが、岡さんも最初は分からなくて、それがだんだん解き明かされて行くという、ある種謎解きのような、推理小説を読むような感じがあったんです。それで、読んで行くうちに「なるほどな」って思うことがいっぱい出てくるんです。

ぼくは、自殺をしようと思ったことはこれまで1回もないんですよ。そういうぼくが自殺の本を書いたりしていいのかっていうご意見もあるかもしれませんけど、それは置いといて、自殺をしようと思ったことのない自分と、自殺の少ない海部町のコミュニティの特性が、似ているというかダブることが結構あったりして、「なるほど、なるほど」みたいな感じで読ませてもらったんです。海部町という地域の特性ということだけでなく、人はなぜ自殺するのかという根源的な問題にも通じることだと思うんです。

 ありがとうございます。

小堀 始まる前、ちょっとお話ししたとき、末井さんが、『自殺』書く前に岡さんの本を読んでいたら、ちょっと書き方が変わったんじゃないか、みたいなこと言ってましたけど。

末井 そうですね。『生き心地の良い町』を読んで1章作れますね。コミュニティのことはまったく考えていませんでしたから。

「病は市に出せ」っていう、ある種キーワードみたいな言葉が出てくるんですけど、「市に出せ」っていうのは、要するに、自分から外に出せっていうことですよね。

 はい。そうです。

末井 それでね、ちょっと話がズレますけど、『生き心地の良い町』を読ませてもらったあと、「べてるの家」を知ったんですよ。「べてるの家」って、北海道の浦河町というところにあって、そこには精神科がある浦河赤十字病院があって、そこの精神科を退院した人や通院している人達が一緒に暮らしているところなんです。そこのモットーが「三度の飯よりミーティング」なんですよ。なんでもみんなの前で話す、そしたらみんなが助けてくれる。それもやっぱり「病は市に出せ」ということに通じると思ったんです。

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