連載「男のパスタ道」【第1回】
ペペロンチーノを極める

土屋 敦 (書斎派パスタ求道者)

おいしいパスタを作りたい。その一念だけで『男のパスタ道』を書いた。パスタを作るひとつひとつの工程を検証して、最善の方法を探る。それを積み重ねることで、とびきりのパスタを完成させる。それが目的だ。

ゆでるときの塩が、まず大問題

おそらくもっとも重要なのは、パスタをどうゆでるべきか、ということだ。あらゆるパスタ料理に共通する工程であり、料理本・雑誌やインターネット上には、実にさまざまなアドバイスが溢れている。ただし、ゆで汁に塩をたっぷり入れろ、いや入れなくてもいい。塩は水が沸騰してから入れろ、いや最初に入れるんだ。岩塩を使え、いや海塩だ......。相反する意見が並び、正解を見つけるのは難しい。私も以前、生活情報サイトのオールアバウトに「ゆで汁に塩を入れないでパスタを茹でるとどうなるか」(http://allabout.co.jp/gm/gc/378964/)という記事を書いたが、これは非常にたくさんの人に読んでいただいた。「パスタのゆで方と塩」問題に関心を持ち、正解を求める人は多いのだ。

ゆでる際に入れる塩とパスタの関係については、塩がパスタのコシを生む、という解説もよく見かける。理由として挙げられるのは、「塩を入れると沸点が上がるから」「塩がパスタのグルテンを引き締めるから」など、さまざまである。しかしよく考えると、沸点は何度上がり、それがどういう形でパスタに影響を与えるのか? グルテンはどんな性質を持っていて、具体的にどう「引き締められる」のか? 分からないことだらけだ。さらに突き詰めれば、そもそもパスタの「コシ」とはどういう状態を指すのか、という当然の疑問に至る。

それで気づいたのは、コシという言葉をきちんと定義したうえで使っている人がほとんどいないという事実だった。我々はどういう状態のパスタをおいしいと感じ、それはなぜなのか。そこまでさかのぼって納得したい。となると、パスタの原料である小麦の特性、パスタの製法、小麦の成分の熱変性まで、あらゆることを自分で調べざるをえない。