山田肇×吉川尚宏×町田徹 【第4回】 「2020年は、消費者重視の競争政策を採るためのターゲットである」
~日本の電波の有効活用を考える座談会~
[左から] 山田肇さん(東洋大学教授)、司会の町田徹さん(経済ジャーナリスト)、吉川尚弘さん(ATカーニーパートナー)

【第3回】はこちらをご覧ください。

無線LANのアクセスポイントは事業として提供すべき

町田: ここでちょっと視点を変えますが、2020年に東京オリンピックの開催が決まったわけですが、ここに向けても大きな課題がいろいろあって、たとえば海外から来た人たちに「Wi-Fiが自由に使えない閉鎖的な国だ」という印象を持たれているわけですが、将来的にはカメラが4Kとか8Kとかどんどん進んでしまうので、今の日本国内のWi-Fiで使い出してみんなが画像や映像をアップロードしたらパンクしてしまうわけですよね。そういう問題に対して何か手を打っていかなくていいんですかね?

吉川: おっしゃる通りでここでまた光の話が出てくると思うんですね。Wi-Fiのアクセスポイントはあちこちに打たれる。それから、総務省は2020年までには第5世代も導入したいと言っていますが、基地局はますますマイクロセル型になっていくんでしょうね。ということは、基地局の数はもっと増やしていかなければいけない。基地局までは光でつないで、末端は電波でつなぐというパターンになると、ある意味では光をもっとどんどん利用してくださいということになると思います。

だから、依然として光の利用促進・整備促進というのは重要で、電波と光をうまく利用してなるべくたくさんの皆さんが使えるようにしましょう、と。最終的なアクセス手段は無線になると思うんですが、光をうまく使って大容量の情報をトラフィックがパンクしないように使えるようにしましょう、という方向にいくんだと思います。

町田: 私が取材していて面白かったのは、ロンドンオリンピックなんですよ。シスコシステムズが、無線との接点になるWi-Fiの基地局をオリンピック開催期間中無償で大量に貸与したんです。ブリティッシュテレコム(=BT)はそこに向けて精一杯固定をそこまで持って行く投資をやらなければいけなかったわけですね。

今の回線スピードと今のカメラの性能ならばいいんですけど、おそらく東京オリンピックのときもシスコシステムズはWi-Fiの基地局を貸与するでしょう。みんなが競技場なんかへ行って撮ってくるカメラは、4K・8Kなどのさらに高精細で大容量のものに変わっているので、ロンドン以上の強固なバックボーンの光を引かなければいけない。それをやらないと東京の無線がパンクする、あるいは東京の通信がパンクするということが起きかねないわけです。

しかし問題なのは、東京オリンピックが終わった瞬間、シスコシステムズはそのWi-Fiを持って帰ってしまうわけです。引いた光ファイバーを何に使うんでしょうか、どうやって投資を回収するんでしょうか、そういう問題もおそらく議論が始まるでしょう。ここに対する答えが今はない。

山田: 東京の無線LANはやたら潤沢に提供されていて、世界に類をみないくらいいろいろなところにアクセスポイントがある。たとえばここにスターバックスがあって、隣にはドトールコーヒーがあって、その隣にも別のカフェがあって、それぞれが無線LANを持っていて、しかもドコモやソフトバンクの提供する無線LANのアクセスポイントもある。

そういうふうに無線LANのアクセスポイントだらけで、いざ自分のスマートフォンからつなごうとしたときに、どこにつなげばいいのか選択するだけですごく余分な時間を食ってしまう。そういう意味ではすごく使いにくい。さらに、ログインするときのメッセージが全部日本語で表示されていて、外国人にはよくわからない。数はいっぱいあるのですから、そこを直せばいい。

これから東京にアクセスポイントを作っていくのはいいとしても、あくまでも事業として提供すべきだと思うんです。今の話のように、たとえばシスコシステムズがある日突然無料サービスを特定期間だけ行います、でも期間が終わったら引き揚げます、ということなら、必ずトラブルが起きます。ましてやどこかの誰かが言っているような、全国無料Wi-Fiなんていうことにしたら、誰がその維持費を出すんですか、運営費は誰が出すんですか。やっぱり経済原理に任せて事業として成立するように整備するのがベストだと思うんです。

町田: ちょっと補足しておきますと、無料の公衆無線LANネットワークのアクセスポイントは少ないけれど、有料のものはいろいろあるんです。ですから、無料のアクセスポイントが少ないというのが外国から来た観光客からの苦情として多いようです。私はロンドンとかニューヨークでつないでみたことはないので、そんなに無料のアクセスポイントがたくさんあるのかどうかは知りませんが。

それから私が心配しているのは、スターバックスでもマクドナルドでも、今つながっているブロードバンドは4Kとか8Kというような強烈な伝送量を必要とするカメラに合致したものではないわけです。それが大量使用されるとなると、現状の太さでは足りないというのが東京都内のネットワーク事情だというふうに聞いています。

山田: それは光ファイバーを増やせばいいだけじゃないですか。

町田: その投資を誰の負担でどうやって将来投資を回収していくんですか、というアイディアがないということですね。そういう回収モデルがないということです。

吉川: ロンドンオリンピックのときは僕も取材したんですが、BTは期間中も有料でした。ですから、ちょっと無料Wi-Fiのことが美化されすぎて伝わっているのかな、と思っています。勿論、無料のWi-Fiは海外にはいろいろあると思いますし、海外からのクレームが多いということも知っているんですが、オリンピック期間中もBTは既存客にはWi-Fiを提供していましたが、Wi-Fiだけを使いたい人にはバウチャーを買わせて使わせるような形にしていたので、どこかでマネタイズはしないと成り立たないです。

たとえば国とか地方自治体が観光予算を投入するという方法もあるかもしれません。観光立国にするんだったらそっちにお金を使ってもいいのかもしれませんが、どこかでマネタイズしないことには破綻します。商店街なのか、自治体なのか、あるいはエンドユーザーなのか、それはわからないですが、誰かがお金を出さないと普及しない。

むしろ、山田さんがおっしゃる通り、インターフェースとかそっちのほうが問題かもしれませんね。私も観光庁がいろいろアンケートをやっているのは知っているんですが、外国人にとって日本のWi-Fiの何が使いにくいのかもうちょっと知りたいな、と思います。

町田: 吉川さんが書いたレポートがきっかけになって、東京オリンピックに向けて東京の人口集中は日本全体を見たときと逆のことが起きるんだ、ということが議論されていますね。

吉川: はい。ストロー現象で、そのあと2027年にリニアができると名古屋圏の人口まで吸い取ってしまうわけです。都市化というのは避けられなくて、そっちのほうは経済成長にプラスだと思うんですが、東京だけじゃなくてもうあといくつか日本の中にメガシティがないと、やっぱり震災のリスクなんかもありますから、どう対応するかというのは本当は中期的に考えていかないといけないと思います。リニアは名古屋圏の人口を吸い取る、ストロー現象が起こると言われているので。

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