『非ユークリッド幾何の世界 新装版』
幾何学の原点をさぐる
寺阪英孝

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「幾何学のふしぎ」物語

 「直線外の一点を通って、これと平行な直線はただ一本しか引けない」というユークリッドの第五公理に対し、「いや平行線は二本引ける」として誕生した非ユークリッド幾何。その考え方と歴史から、幾何学の魅力をさぐる。

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1977年にブルーバックスから刊行され、30年以上にわたって刊行されてきましたが、残念ながら数年前にいちど品切れとなっていました。非ユークリッド幾何という、一見とっつきにくいと思われていた分野ですが、現代の物理学の中でその存在は確固としてあり、われわれは恩恵を受けているのです。

今回は、多くのブルーバックスファンからの復刊を願う熱いメッセージと、秋山仁先生からの推薦もあり、名著復刊となりました。

秋山先生から「新装版に寄せて」の文章をいただき、新装版に掲載いたしました。秋山先生が院生だったころの寺阪先生との出会いやエピソードが語られています。


はじめに

 直線外の一点を通ってこれと平行な直線は、ただ一本しか引けない、というのが昔からある普通の幾何、ユークリッド幾何である。ところがこの幾何のほかに、平行線が一本だけではなく、二本引けるのだ、という不思議な非ユークリッド幾何というものも存在することが、十九世紀の中頃に発見されて、センセーションをまき起こした。こんな不合理なことが数学ともあろうものに起こっていいもの、だろうか、と。

 というわけで、アインシュタインの一般相対性理論のおかげで一躍ポピュラーになったこの非ユークリッド幾何は、今日でもその不思議さは一向になくなっていない。それもそのはず、不思議なことや変なことだったら、ユークリッド幾何にだっていくらもあるからで、これが幾何の魅力の一つでもある。

 さて本書の内容を少し述べると、第1部では師弟関係にあると覚しき老生、A君の二人が、平行線とはいったいどんなものだろうか、いったいどう見えるものだろうかという、ごく初歩的なことを、ナイーヴに、ごく直観的に考えていく。すると結局、直線外の一点を通ってこれと平行な直線がただ一本引ける、というユークリッド的な考え方も、二本引けるという非ユークリッド的な考え方も、どちらが自然で、どちらが不自然である、ということはなかなかいえないのじゃないか、という結論に達する。つまり不思議は不思議として、非ユークリッド幾何も存在し得る、というのが第1部の論旨である。

 第2部は非ユークリッド幾何を発見した人々が、その発見のために如何に苦しんだか、悩まされたかという、大発見にまつわる苦悩の歴史である。未知の部分がまだ残されたままであるが、この歴史を知らないで非ユークリッド幾何を語ることはできないであろう。

 第3部はこれまでとはまったく趣を変えて、非ユークリッド幾何を実際に作ってみせる話である。これには初等幾何を応用してみた。余り知られていない方法を使ったところもあるので、興味をもたれる方もある一方、ふだん馴れていない人には読み通すのがちょっとしんどいかもしれない。ただ図だけは十分に入れておいた。また適当に目を通して下さい。

 付録はもちろん特に意欲ある方のためのものである。

 第1部を読んだだけでも、ユークリッドの『原論』の話もあり、非ユークリッド幾何がどんなものであるか、ほほ見当がつくのではないかと思われる。さらに第2部のお話を読めば、数学者といえども生々しい人間であることがわかり、数学に親しみがもてるようになるのではなかろうか。

 この小冊を読んで幾何学の不思議に興味をもたれる人がわずかでも出できたら幸いである。

著者 寺阪英孝(てらさか・ひでたか) 
1904年、東京都に生まれる。1928年、東京大学理学部数学科卒業。大阪大学、東京女子大学、上智大学各教授を歴任。大阪大学名誉教授。理学博士。1996年、92歳で逝去。
『 非ユークリッド幾何の世界 新装版 』
幾何学の原点をさぐる

寺阪英孝

発行年月日: 2014/08/20
ページ数: 256
シリーズ通巻番号: B1880

定価:本体  900円(税別)
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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)