日本の底力

震災4年目/余震の中で新聞を作るVol.108 ~飯舘の春いまだ遠く/福島・松川第1仮設から

河北新報編集委員が記録する「被災地のジャーナリズム」

2014年08月18日(月)
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集会所での「スコップ三味線」教室=14年1月25日

Vol.107はこちらをご覧ください。

写真文/寺島英弥 (河北新報編集委員)

115回目 ~飯舘の春いまだ遠く/福島・松川第1仮設から

【この回は、河北新報の連載『飯舘の春 いまだ遠く~松川工業団地第1仮設から』(2月20~24日の5回)を基に加筆したブログ版です。遅くなりましたが、仮設の方々との約束でした。以後のことも書いていく予定です】

「たたく場所で微妙に響きが違う。左手も、三味線の弦を押さえるように動かして」

ボランティア指導で訪れた福島市の会社員金田光一さん(56)が手本を見せました。響いたのは、本物の三味線ではありません。2014年1月下旬、同市松川町にある松川工業団地第1仮設住宅の集会場であった「スコップ三味線」教室。生徒は、福島県飯舘村から避難している入居者たちです。

道具のスコップを1本ずつ抱え、取っ手の側の柄を左手で握り、膝に抱えた金属の歯の部分を、栓抜きで一斉にたたきます。流れるCDの演歌に乗って、チンチンカンカン、チンチンカンカンと合奏が盛り上がました。自治会長の木幡一郎さん(77)が満面の笑みで、こう締めました。

「うまい! 大したもんだ。みんなで、『桜まつり』に出ような」

桜まつりは、飯舘村の地区ごとにあった豊作祈願の春祭りを、入居者が共に楽しむ日。仮設住宅が開設された翌年の12年から4月末恒例で、自治会が広場で開いています。支援する地元有志が提供する大型トレーラーの荷台を舞台に、入居者たちが演歌や民謡を歌い、踊り、仮装の芸を披露します。避難生活の憂さを忘れ、みんなで腹の底から笑う日なのです。

毎週土曜日、スコップ三味線の教室が開かれるようになったのは、自治会が前年の桜まつりに、演奏者として活動する白石市の城まさおさんを招いたのが機縁でした。07年、スコップ三味線の第1回世界大会(五所川原市)で個人の部優勝という城さんの名人芸に、「自分たちもやってみたい」という入居者のリクエストが相次いだそうです。「小さくても、楽しい目標をつくることが大事なんだ」と木幡さんは言います。

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