中国
北京市政の整頓のために報刊亭1000軒を破壊!? 「南ロシア」から「西朝鮮」へと後退した中国の現実
〔PHOTO〕gettyimages

「この国はいつだって庶民が犠牲になる」

8月1日、私は北京東部の12車線の北京最大の目抜き通り建国路(長安街)に面した「報刊亭」(新聞・雑誌スタンド)に来ていた。より正確に言えば、「報刊亭跡」に来ていた。

私は2年前まで北京に住んでいて、毎日山のように新聞やニュース誌を買っていた「報刊亭」だ。この「報刊亭」の安徽省出身のオヤジは、「最大の顧客」(つまり私)に配慮して、私が属する会社が中国語版の版権を扱っている日本の雑誌各誌を、常に最前列に並べてくれ、まるで小社の社員のごとく、販促に力を入れてくれていた。

それがこの日、半年ぶりに訪れてみたら、「報刊亭」は跡形もなく消えていたのだ。隣にあった屋台のハンバーガーショップも消えていた。

私がキョロキョロと辺りを見回すと、遠くで男が手を振って、急いでミニバイクに乗ってやってきた。懐かしい「報刊亭」のオヤジだった。

「新聞と雑誌を買いに来たんだけど、なぜここに『報刊亭』がないの? もしかして引っ越したの?」

私が聞くと、オヤジは大きくため息をついて、語り出した。

「昨晩、陽が暮れたので店を畳もうとしていたら、突然大型トラックが目の前に止まり、そこから大勢の男たちがドドドドッと降りて来た。そして瞬く間に、報刊亭を叩き潰し、置かれていた新聞や雑誌もすべて、トラックに詰めて持っていってしまった」

「それはひどい話だ。すぐに公安(警察)に訴えたの?」

「オレの『職場』を叩き壊したのは公安なんだよ。公安に訴えてどうする」

「ではなぜ公安は、突然そんな蛮行を行ったの?」

「さあね。昨晩、公安の連中に聞いたら、『市政を整頓するためだ』と言っていたが、よく分からない」

「ここの報刊亭だけがやられたの?」

「この建国路と、第三環状線の東路すべてだ。100軒近くに上る」

「こんな目に遭って、公安からの保障はあるの?」

「そんなものあるわけないだろう。この報刊亭を借りるのに、3万元(約50万円)の敷金がかかったのに、それもパーだ」

「本当にひどい話だなあ。で、今後はどうするの?」

「仕方ないから、家の荷物をまとめたらすぐ、安徽省の故郷に戻るよ。この国はいつだって、庶民が犠牲になるんだ」

そう言って「報刊亭」のオヤジは、シニカルな笑いを浮かべた。

事ここに及んでも、笑顔を振りまけるのだから、中国の庶民というのは、何と偉大な存在だろうと、その場で感心してしまった。私はあの歯の抜けたオヤジのシニカルな笑いと、「この国はいつだって庶民が犠牲になる」という言葉は、生涯忘れないだろう。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら